トライアウト2014。あのドラフト上位選手の再挑戦 (3ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Nikkan sports

 2005年に希望枠で北海道日本ハムに入団し、1年目に12勝を挙げて新人王に輝いたのが八木智哉だ。2013年に糸井嘉男とともにオリックスにトレードされた。しかし、移籍後1勝も挙げられないまま、戦力外となった。

 無安打に抑えたトライアウト後、報道陣に簡単にコメントを残すと、ゆっくりとロッカールームへ歩いていった。

「いやー、良かったっしょ? スライダーと真っ直ぐしか投げていないけど、左右の打者に、いい高さに投げられた。あとはオファーを待つだけっすね。野球がやれるならどこへでも行きます」

 今季からヤクルトに所属していた真田裕貴も、2001年にドラフト1位で球界に身を投じた選手だ。2008年まで巨人に在籍したあと、横浜にトレードで出され、2011年オフにはメジャーへのポスティング移籍を目指した。その際、米国でトライアウトを受験したが入札に参加するメジャー球団はなく、2012年シーズンは古巣の巨人に復帰(その年のオフに戦力外に)。翌年は台湾の兄弟にテスト入団し、リーグ新記録となる32ホールドの活躍をみせ、「中継王」のタイトルも獲得した。

 今季はヤクルトに所属したが、またしても1年で退団する憂き目に遭う。

「プロ入りして13年、シュートボールで飯食ってきましたから、トライアウトでもシュートを多投しながら、しっかりゴロを打たせるようにイメージして投げていました」

 ヒット性の当たりは1本。右打者へのシュートを有効に使っていた。

「独特の雰囲気、独特の緊張感がトライアウトにはある。カウント1-1から限られた打者との対戦でアピールするのは難しいですが、結果を残せたので納得しています」

 例年、国内外の球団首脳陣やスカウトが集結するものの、この舞台から契約に結びつくケースは極めてまれだ。それでも選手は一縷(いちる)の望みを託し、トライアウトに参加する。

 その一方で、この場にはプロ野球選手の引退後の活動を支援する団体の関係者、野球用具メーカーの関係者たちも足を運び、プレイを終えた選手に声をかけている。

 トライアウトは、戦力外となった選手たちが現役生活に区切りを付け、セカンドキャリアに向け第一歩を踏み出すケジメの舞台でもあるのだ。

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