トライアウト2014。あのドラフト上位選手の再挑戦

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Nikkan sports

 第1回12球団合同トライアウトが11月9日、静岡・草薙球場で開催された。プロ野球への生き残りを懸け、必死にアピールする選手の姿を、今年も5000人のファンが見守り、多くのテレビカメラが追った。

 参加者は投手34人、野手25人の計59人。参加者は当日になってみないとはっきりせず、出場が予想されていた吉川大幾(2010年、中日ドラフト2位)や藤江均(2008年、横浜ドラフト2位)の名は、今回のリストには載っていなかった。

第1回合同トライアウトには59人の選手が参加した第1回合同トライアウトには59人の選手が参加した

 リストの中でまず目を引いたのは、弱冠20歳の若さでDeNAを戦力外となった北方悠誠だった。佐賀・唐津商業から2011年ドラフトで1位指名を受けて入団しながら、北方はわずか3年で居場所を失うことになった。

「自分の中では外れの外れで指名された1位ですから、ドラ1のプライドみたいなのはなかったし、3位入団ぐらいの気持ちでやってきました」

 将来性を買われて入団し、昨年オフに派遣された台湾のウインターリーグで158キロをマークして、今季は中畑清監督からクローザー候補と期待されていた。それでも戦力外通告を受けたのは、制球難が理由だった。今季途中にはサイドスローにするなど、試行錯誤を繰り返しながら、結局、元のオーバーハンドに戻す混迷の1年だった。

「どんなふうに投げたら、元に戻れるのか......。どうやったら、新しい自分を見つけられるのか......。僕、イップス()なんですよ。思ったところに投げられない。ボールが指にかからなくなって、リリースポイントがわからなくなった。メンタル的な問題があったのかなと思います」
※精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、思い通りのプレイができなくなる運動障害

 フォームに悩む間に横浜にあるイップス研究所に通って原因を探し、通告を受けてからトライアウトまでの時間は、あえて硬式球を手にせず、水泳を行なったり、重たいボールを投げ込んだりしていた。

「投げることで悩んできた。それならこれまでやっていなかったことをやって、違う感覚を養った方がいいのかなって」

 打者4人とカウント1-1から対戦するトライアウトでは、やはり制球難が顔をのぞかせ、ふたつの四球を与えてしまう。復活をアピールできたとは言い難い結果だった。

「いい勉強ができた1年間だった。新天地のオファーがあるなら、自分ができることを精一杯やりたい」

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