阪神・安藤優也、果たせなかった11年越しのリベンジ (3ページ目)

　第３戦もソフトバンクが優位に試合を進めた。５回を終わって０対２。打線が湿りがちな阪神はこれ以上、点差を広げられたくなかった。しかし、６回裏に先発・藤浪晋太郎と２番手・高宮和也が二死満塁のピンチを招く。ここで安藤の名前がコールされた。

　ちょうど鷹の強力クリーンアップを迎える打順。安藤は３番・内川聖一をシュートで詰まらせるも、ゴロを処理した三塁・西岡剛の二塁送球が野選となり、まず１点。続く４番・李大浩にはフルカウントからの６球目を遊撃と中堅の間にポトリと落とされ、勝負を決定付ける２点を追加された。いずれも打ち取ったかに見えた打球。安藤にとっては不運としか言いようがない。

　それは翌日の第４戦も続いた。２対２の同点で迎えた９回裏を安藤が３人でピシャリと抑えると、延長10回表に阪神はビッグチャンスを作る。一死一、三塁で打席にはセ・リーグ打点王のゴメス。誰もが勝ち越しを信じたが、まさかの併殺……。その裏、２イニング目に入った安藤は先頭・明石健志を四球で歩かせ、一死後、本多雄一の犠打を捕手・藤井彰人が二塁へ送球するも間に合わず、またしても野選でピンチが広がった。ここで安藤は降板。代わってマウンドに上がった守護神・呉昇桓（オ・スンファン）が中村晃にサヨナラ３ランを浴び、日本一に王手をかけられた。

　この日の試合後、安藤は報道陣の問いかけに終始、無言を貫いた。「安藤は悪くない」という声もあった。たしかに、明石にカウント３－１から投じた５球目はストライク判定でもおかしくないボールだったし、藤井が安全に一塁へ送球していれば……。ただ、先頭打者の明石に対してボールを先行させ、足の速い走者を出してしまったのは安藤自身。自責の念が口を閉ざさせたのだろう。

　第５戦にも敗れた阪神は、１勝４敗でまたしても日本シリーズの敗者となった。熱狂的なファンが待つ甲子園に帰ることなく、目の前で秋山幸二監督の胴上げを見せつけられた。この日は登板機会のなかった安藤が、３度目の日本シリーズを振り返った。

「自分のピッチングはできたので、そういう意味ではよかったと思います。悔い？　ないです」

　違う選択をしていれば……という後悔はない。ただ、チームとしても、個人としても、2003年の借りを返すことはできなかった。今年はリーグ２位から勝ち上がっての日本シリーズ出場だっただけに、来年こそ優勝して、この舞台に戻ってきたいとの思いを強くしたはずだ。

「まだ日本一になっていないんでね」

　来季は37歳のシーズンとなる。これから何度、日本シリーズの舞台に立てるか分からない。ただ、「無我夢中だった」２年目のあの日から何年かかろうとも、借りを返すまで挑戦をやめるわけにいかない。