メッセ&能見、巨人撃破へ1年越しの思いを語る

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 10月12日、阪神が「悲願」のクライマックス・シリーズ(CS)ファイナルステージ進出を決めた。日本一でもなければ、リーグ優勝でもない。それでもあえて「悲願」と表現したのは、それだけ長い道のりだったからだ。

昨年のCSでは登板機会のなかったエース・能見篤史昨年のCSでは登板機会のなかったエース・能見篤史

 セ・リーグにCSが導入されたのは2007年。阪神はその初年度と翌08年、10年、13年の4度、レギュラーシーズンで2位または3位となり、CSに進出した。しかし、勝ったのは中日と戦った08年の2戦目のみ。通算1勝8敗という散々な結果が残っていた。05年、千葉ロッテとの日本シリーズで4連敗したこともあり、「阪神は短期決戦に弱い」というイメージが定着していたのも事実。選手たちに聞けば、「苦手意識があるわけではない」という答えが返ってきたが、本音はどうだっただろうか......。

 その「呪縛」から、ついに解き放たれたのである。今季、セ・リーグ2位の阪神は、3位の広島と本拠地・甲子園でCSファーストステージを戦った。昨年と同じ顔合わせ、同じ舞台。スタンドのほぼ半分を真っ赤に染められ、2連敗と辛酸をなめた相手にリベンジする時がやってきた。

 結果は冒頭に書いた通り。10月11日の第1戦に1-0で勝利し、翌12日の第2戦を0-0で引き分けた(規定により延長12回表コールドゲーム)阪神が、王者・巨人への挑戦権を得た。スコアを見れば分かるが、2試合とも投手戦となった。阪神の歴史を塗り替えるべくマウンドに上がったのべ5人の投手は、計21イニングを無失点に抑えてみせた。

 ゲームを作ったのは、もちろん先発投手のふたり。初戦を任されたランディ・メッセンジャーと2戦目に指名された能見篤史には、それぞれ1年越しの思いがあった。

 2013年のペナントレース、メッセンジャーはチーム最多の196回1/3を投げ、チーム最多の12勝をマーク。6完投がチーム最多タイなら、3完封もチーム最多だった。183奪三振で自身初のタイトルも獲得している。

「CS初戦の先発はオレだ」

 声高に言わなくても、心の中ではそう思っていたようだ。間違ってはいない。短期決戦の初戦は「エース」に託されるのが定石。実際にエースと呼ばれていたのは能見だったけれど、残した数字を見れば、メッセンジャーが指名されてもおかしくはなかった。和田豊監督も「基本的な考え方は、そう」と言い、CSや日本シリーズのような短期決戦の初戦先発は、レギュラーシーズンで安定した成績を残し、チームをけん引した投手に託すもの、という考え方に同意した。

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