日本一のセットアッパーへ。佐藤達也が見る8回の風景 (2ページ目)
「以前、8回を任されていた平野さんが自分に話してくれたことがあるんですけど、大切なのはしっかり8回で流れを切ることだ、と......相手チームの勢いを8回で切って、9回のピッチャーに渡す。そのためには、3人で抑えて平野さんに渡せればいいんですけど、そこはなかなか難しいですね(苦笑)」
それでも佐藤はこの日、8回をきっちり3人で切って、平野にバトンを渡した。
特筆すべきは、"1-2"だった。
この回、2番から始まったライオンズの攻撃。佐藤は渡辺直人、栗山巧、中村剛也の中軸3人に対し、いずれもワンボールツーストライク、つまり"1-2"というピッチャー有利のカウントを作ってから、仕留めにかかっている。
渡辺に対してはアウトコースのストレートでカウントを稼ぎ、最後はインコースへ投じたストレートを詰まらせ、センターフライ。栗山にもストレートで追い込んでから、最後はフォークボールを引っ掛けさせ、セカンドゴロ。中村にはスライダーとストレートで追い込んでから、ボールになるスライダーを振らせて、三振――ストレートを軸に変化球をうまく散りばめた、見事なピッチングだった。佐藤がこう続ける。
「ランナーがいる場面で出ていったときは、基本、120パーセントで投げて三振を取りに行くんですけど、8回の頭から行くときは100パーセントで投げますね。自分の場合、バッターがストレートを狙ってくることが多いんですけど、狙われてるとわかっていても真っすぐを投げて空振りを取れるのが理想だと思います。ただ、なかなかそうはいきませんし、交流戦に入る前あたりはイメージ通りの真っすぐを狙ったところに投げられる感覚があったんですけど、今はいろいろごまかしながら(笑)、スライダーやフォークを混ぜて、なるべくバットに当てさせないようにと思って投げています」
ドラゴンズの浅尾拓也のようにセットアッパーがMVPを獲ったり、ジャイアンツの山口鉄也のように、セットアッパーの推定年俸が3億円を超えるようになって、8回を任されるピッチャーへの依存度は、間違いなく高まっている。今の時代、クローザーとセットアッパーに"上下"はない。むしろ適性に応じて、それぞれのスペシャリストが求められる時代だと言っていい。佐藤も、やがてはクローザーという夢を描くのではなく、セットアッパーのスペシャリストを目指しているのだという。
「確かに、試合を終わらせるというのは気持ちがいいんですけど、自分はそういうタイプではないと思います。どちらかというと、スクランブルで6回、7回、8回 あたりを投げるほうがいいピッチャーなのかなって、自分ではそう思ってるんです。性格的にはハートが弱い方で、普段は心配性なんですけどね。いつも、ビクビクしてるというか......(苦笑)でも、自分が何のために野球をやってるのか、そこを考えたら、そんなことは言ってられませんからね」
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