785日分の強さを身に付け、斎藤佑樹は生まれ変わった
785日は、長かった。
しかしこの日、マウンドを降りるまでの2時間25分も長かったに違いない。
何しろ、生命線としてきたストレートが思うように指にかかってくれないのだ。
苦しみながらも、粘りに粘った2時間25分だった。
7月31日の試合でロッテ打線を6回1失点に抑え、785日ぶりの勝利を飾った斎藤佑樹。
幕張の浜からすさまじい風が吹きつける、7月31日の千葉――斎藤佑樹はマリーンズを相手に2012年6月6日以来、785日ぶりの白星を手にした。
6イニングを投げて、被安打6、与えた四死球は5、それでいて失点は1。
その1点が2回の先頭バッター、角中勝也に打たれたホームランだったのにもかかわらず、初回から5回まで斎藤は毎回、得点圏にランナーを背負った。つまり 角中に一発を浴びた2回も、打たれた後、さらなるピンチを背負ったのである。しかしその回も含めて、斎藤は得点圏にいたランナーを、ひとりとしてホームへ還すことはなかった。
ストレートが思うように投げられなかったのに、なぜそんなピッチングができたのか。
ポイントは、そのストレートに見切りをつけたところにある。
この3カ月、斎藤がファームで作り上げてきたピッチングスタイルは、ストレートを軸に、ストライクゾーンで勝負するということだった。この日も斎藤はまず、そのスタイルを貫こうとした。
1回裏、斎藤が先頭の岡田幸文に投げた、ストライクゾーンへのストレート。
その球を、いきなりセンター前へ運ばれた。
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