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プロが脱帽。オリックス金子千尋はココが凄い! (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 一方、金子を得意としている打者は、金子にどんな印象を持っているのだろうか。ロッテの内野手、今江敏晃は金子から通算59打数19安打、1本塁打、打率.322と打ち込んでいる。

「もちろんトップレベルのピッチャーですが、僕の中ではそんなに特別な感じはしません。印象としては、軽く、淡々と投げて150キロを出す感じです。あんなに速いボールを、本当に淡々と投げてくる。あとは、全部の球種をすべて同じ投げ方で投げてくる。ただ、僕は淡々ではなく、必死にバットに当てているだけです(笑)」

 ヤクルトの岩村明憲は「選手が選手のことを語りすぎてもいけない」と言いながら、金子について熱く語ってくれた。

「オレがアメリカから帰国して楽天に入団する前だったかな。長野県で開催されたトークショーで(金子)千尋と一緒になったんだけど、ユニフォームを着ていなかったら本当に野球選手かどうかわからないんだよね(笑)。優しい顔をしているし、腰も低い。すごく甘い雰囲気を持っているけど、マウンドに立てばものすごいボールを投げてくる。メジャーでいえば、ジャイアンツのティム・リンスカムに雰囲気が似ている。ピッチングのスタイルは違うけど……。見た目の話ね(笑)」

―― ピッチングに関しては、どんな印象がありますか。

「ピンチになればなるほど強くなる。ダルビッシュ有や田中将大にも言えることだけど、得点圏にランナーを背負った場面でギアを上げるのはもちろんだけど、彼らは、たとえばノーアウト二、三塁や、ノーアウト満塁という絶体絶命のピンチになると、ギアを2つ上げてくる。ギアを2つ上げるピッチャーはそういないですよ」

―― ピッチャーがギアを上げてきたら、バッターもギアを上げて立ち向かうのですか。

「ギアというより、いつも以上の集中力が必要ですよね。僕は若い野手にいつも『とにかく自分のリズム、自分の雰囲気でピッチャーと勝負しろ』と言っています。ピッチャーのギアが上がったところで、こっちもそれ以上のものを出さないと相手の雰囲気に呑み込まれてしまいますから。ただ千尋の集中力はすごい。打者を完全に呑み込んでしまいますから」

 岩村は金子のピッチングスタイルについて、「グレッグ・マダックスに似ている」と言った。マダックスは90年代にアトランタ・ブレーブスのエースとして黄金期を支え、“精密機械”と呼ばれた抜群の制球力を武器にメジャー通算355勝をマークした大エースだ。

「オレがマダックスと対戦した時はもう晩年だったけど、相変わらずコントロールは素晴らしかった。キャッチャーの構えたところにボールがくれば、『ストライク』というのが審判にもあったと思うんです。審判を味方につけている感じがありました。そういう意味で、千尋もそうです。すごく集中した場面で、針の穴を通すようなコントロールを見せつけられると、審判もその迫力に呑み込まれて、少々ボール気味の球であっても『ストライク』とコールすることがあると思うんですよね」

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