復活のマウンドへ。斎藤佑樹が導き出したひとつの答え (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 斎藤は、涼しい顔がよく似合う。

 ポンポンポンとストライクを投げればいい。

 打たれても抑えても、眉ひとつ動かさず、淡々と投げ続ける。

 そういう斎藤が見たかった。

 ところが――。

 いったいいつ、切り替えることができたのだろう。

 6月7日の室蘭で、ベイスターズの二軍を相手に投げた斎藤は、それまでとはまったく違うピッチングを見せた。明らかに、ストライクゾーンで勝負を挑んでいたのである。ワンバウンドは、97球のうち8球。しかし、どれも慎重に置きにいったワンバウンドではなく、腕を振り切ってのワンバウンドだった。7回を投げて2点に抑えた斎藤は、こう言った。

「ストライク先行と、ストライクゾーンの真っすぐで勝負すること。そのふたつとも、いい感じで出来ました。今日は、ど真ん中でも打たれないって感じでいきましたよ(笑)」

 6月15日のイーグルス戦(利府)では、マウンドが柔らかすぎたせいで思い切って腕を振ることができなかったが、6月24日のベイスターズ戦(横須賀)では、これまでに感じたことのない、圧倒的な安心感を与えるピッチングを披露した。斎藤は、技術的にも何かをつかんだようだった。

「軸の位置をね、少し変えてみたんです。真ん中から、少し後ろへずらしたら、いい感じで体重移動ができるようになりました」

 そして7月5日の北海道、遠軽。

 1カ月と少し前、慎重になりすぎてワンバウンドを連発したライオンズを相手に、斎藤は5回、81球を投げて、無四球、無失点のピッチングを見せた。打者18人に対し、ツーボール、ノーストライクと、ボールが2球先行したのはひとりだけ。2球目までにはストライクを取り、有利なカウントから変化球に頼ることなく、ストレートで勝負した。ワンバウンドは7球あったが、そのうち2球は空振りを取った。この日もライオンズの4番に座った山川が、斎藤を評してこう話していた。

「ボールは変わっていなかったけど、今日はフォアボールがなかったんじゃないですか。あれだけストライクゾーンにポンポン来られると、バッターはイヤなものですよ」

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