2014.05.13

3年前は専門学校生。
広島・一岡竜司が実現したシンデレラストーリー

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by Nikkan sports

 昨年12月末のことだった。一岡竜司は、巨人にFA移籍した大竹寛の人的補償として広島に移籍することが決まった。東京・大手町にある読売巨人軍の球団事務所で挨拶を済ませると、その足で、東京・よみうりランド内のジャイアンツ球場へロッカー整理に向かった。野球道具と思い出を詰め込んだ段ボールを車に運び入れ、2年間、汗を流したチームを後にした。

今や広島投手陣に欠かすことのできない存在となった一岡竜司。

「本当にお世話になりました。広島に行ったら、チャンスはありますかね? 今は不安ですが、頑張ってきます」

 寂しさを、笑顔で覆(おお)い隠していた。ともにプレイした宮国椋丞が寂しそうな表情で、新天地へと向かう男の車を見送った。

 巨人での2年間は巨大戦力の中で、一軍定着はならなかった。無理もない。一岡が目指していたリリーフというポジションには、スコット・マシソン、山口鉄也、西村健太朗といったタイトルホルダーたちがいた。

 その他、左のワンポイントには青木高広がいた。残された右の中継ぎ枠はシーズン途中からセットアッパーにまわった澤村拓一に与えられた。大差がついた時や負けゲームで投げる役割の枠には、一軍と二軍を行き来する投手たちが起用されてきた。一岡は香月良太や笠原将生らとそのポジションを争った。

 昨季二軍では35試合0勝1敗15セーブ、防御率1.10。その結果が認められ、一軍でも登板のチャンスを与えられた。だが、好投して首脳陣から高い評価をもらっても、勝利の方程式に組み込まれることはなかった。

 そんな一岡が、移籍した広島でセットアッパーというポジションを与えられ躍動した。4月26日、本拠地・マツダスタジアムでの古巣・巨人戦。エース・前田健太と内海哲也の投げ合いで、試合は0対0の延長へ。一岡は11回から登板した。

 ここまで12試合で無失点だった一岡は149キロの力強いストレートを武器に、好調のレスリー・アンダーソン、村田修一らをねじ伏せた。一岡の好投はチームに勢いをもたらし、その裏、エルドレッドが山口鉄也からサヨナラ3ランを放ち勝利した。プロ初勝利は運命のいたずらか、古巣からだった。