2014.02.18

虎の守護神候補・呉昇桓は藤川球児を超えられるか?

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 沖縄・宜野座の阪神キャンプは、いつもブルペンに注目が集まっていた。2年目を迎える藤浪晋太郎はもちろんだが、韓国球界で通算277セーブを挙げた呉昇桓(オ・スンファン)にも熱い視線が注がれていた。いつ本格的な投球を披露するのか。わずか2、3日投げないだけで、それ自体がニュースとなり、30球程度の立ち投げであっても関西ではスポーツ紙一面レベルの扱いになる。本人はいささか食傷気味のようだが、致し方ない。なにしろ、一昨年オフに抜けた藤川球児の穴を埋めるべく、年俸3億円で、球団史上初めて、韓国から迎えたアジアの守護神なのだから――。

韓国での9年間で277セーブを挙げた呉昇桓。

 球速150キロを超すストレートと鋭く曲がり落ちるスライダーが武器の呉。そのストレートは、”ズドン”という形容がふさわしいほど重く、キレもある。そのため打者は球速表示以上のスピードを感じるという。スライダーは制球力に長(た)け、とりわけ右打者の外角低めに曲がり落ちるそれは、空振りを取るのに十分なボールだ。基本、この2つの球種だけで、呉は韓国球界の9年間で444試合に登板し、28勝13敗277セーブ、防御率1.69の成績を残した。

 2006年には47セーブを挙げ、シーズン最多セーブのアジア記録を塗り替えた(2011年にもシーズン47セーブを記録)。昨シーズンは48試合に登板し、4勝1敗28セーブの成績にとどまったが、これは所属するサムスンが大勝する試合が多く、単純に登板機会が減ったものだ。代わりに、48試合のうち12試合で”イニングまたぎ”をして、すべてチームを勝利に導いた。これだけでもスタミナや安定感を証明するには十分な数字だと言える。

 巨人関係者の中には、「フォークのようにハッキリと落ちる球種がない」と指摘する者もいたが、このキャンプでは新たにツーシームも試投しはじめた。まだウイニングショットになるだけの完成度はないが、見せ球として使うだけでもスライダーをより生かす効果はある。何より重い球質で角度のあるストレートが低めに決まれば、容易に得点圏に走者を送ることはできない。さらにノーワインドアップの時には、踏み出す左足が地面に着くのがわずかに遅く、打者にしてみればタイミングが取りづらいなど、球威、球速、フォーム……いずれをとっても不安要素は見当たらない。

 キャンプ序盤で、左足の使い方に二段モーションの可能性があると審判団から指摘されたが、国際大会でも問題がなかったように、本人はまったく気にしていないという。