【プロ野球】2014年に懸ける崖っぷちの男たち

  • 津金一郎●文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Nikkan sports

 2月1日から始まったプロ野球12球団キャンプは、ふたりの"松井"に注目が集まっている。ひとりは松井秀喜。臨時コーチとして2002年以来、12年ぶりに古巣・巨人に復帰した。もうひとりは楽天の高卒ルーキー・松井裕樹だ。高校球界屈指の奪三振王は新人としてはチームでただひとり、一軍スタートを切った。楽天の高卒ルーキーがキャンプを一軍でスタートするのは田中将大以来。将来は球界を代表する投手になることを期待されてプロ生活の第一歩を踏み出した。

キャンプ初日から精力的に汗を流す巨人・井端弘和。キャンプ初日から精力的に汗を流す巨人・井端弘和。

 この松井裕樹をはじめ、このキャンプでは計32人のルーキーが一軍キャンプに抜擢された。不慣れな初めてのキャンプながらも、活気をみなぎらせているルーキーたち。しかし、そんな彼らに混じり、実績十分な選手たちも大粒の汗を流している。再起を果たすために――。

 まだ巨人の背番号2のユニフォーム姿が違和感を残す井端和弘(38歳)は、精力的に自主トレをこなして宮崎キャンプに臨んだ。例年はキャンプ直前の自主トレ期間中にバッティングをすることはなかったが、今年は「これだけ早い時期に投手の球を打ったのは今までになかった」と、異例のハイペースで調整を進めてきた。昨季終盤に受けた右ヒジ、右足首の手術の影響を微塵も感じさせない動きを見せる。それもすべては、新天地でレギュラーをつかむためだ。

 井端は昨年11月に年俸1億9000万から88%ダウンの2300万円の提示を固辞して中日を退団した。ゴールデングラブ賞に7回輝いた17年目の名手も、新天地での主な役割は内野のバックアップと右の代打要員。しかし、2000本安打まで残り193本に迫る井端が、控えのポジションに甘んじる気はない。ショートには坂本勇人、セカンドには西武からFA移籍した片岡治大が座るが、長いシーズンではスランプや不測の事態も起こり得る。その数少ないチャンスを手にするために、キャンプ初日からアピールを続けている。

 その井端と入れ替わるように中日にFA移籍した小笠原道大(40歳)は、沖縄・北谷(ちゃたん)球場で汗を流している。

 昨年は22試合9安打1本塁打と17年間のプロ生活で自己ワーストの成績に終わり、2011年、2012年に続いて不完全燃焼のシーズンとなった。引退の危機もあったが、落合博満GMに「普通のことをやれば人並み以上の成績を残す。その場所が来年はドラゴンズということ。必要のない戦力には声を掛けません」と請われた。

 入団会見で「新しいドラゴンズとして強くなる中で、ひとつのピースとして頑張りたい」と語った小笠原は、希望のポジションについては明言していない。サードならルナと森野将彦、ファーストなら森野と新外国人のアレクシス・ゴメスとの争いが待っている。それでも背番号36の大ベテランは、「やることは一緒。張り切って飛ばしすぎないようにしたい」とマイペースに調整を進めながら、虎視眈々と144試合で働ける場所を狙っている。

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