楽天の「考えられない継投」を可能にした美馬学の好投
山村宏樹が見た日本シリーズ第7戦
第7戦までもつれた2013年の日本シリーズは、楽天が巨人を3-0で下し、球団創設9年目にして悲願の日本一を達成した。第6戦でエース・田中将大が打たれ巨人に逆王手をかけられた楽天だったが、先発の美馬学が6回を1安打無失点に抑える好投。その後も、則本昂大、田中が気迫のピッチングを見せ、巨人打線を圧倒した。この試合、そしてシリーズのポイントになったのはどこだったのか。楽天の球団創設時のメンバーで、昨年、現役を引退した山村宏樹氏に総括してもらった。
日本シリーズ第7戦は楽天が巨人を3-0で破り、球団創設9年目にして初の日本一を達成した。
チーム一丸となってもぎ取った楽天の日本一ですが、第7戦についていえば、やはり先発・美馬学の好投が最大の勝因でした。美馬はクライマックスシリーズのロッテ戦で完封し、日本シリーズに入っても2試合に先発して1点も与えず2勝を挙げました。MVPに選ばれて当然の内容でした。
ただ、ここに来て急に美馬の状態が上がってきたかというと、そうではありません。シーズン中から彼のピッチングを何度も見ていますが、シリーズの投球が特別良かったわけではありません。第7戦では逆球も多かったし、カウントを悪くする場面も目立ちました。それでも6回を1安打無失点に抑えることができたのは、内角を大胆に攻められたからだと思います。
美馬は今シーズンからシュートを投げ始めました。私も現役時代はシュートを得意としていたのですが、今年のシーズン前、彼からシュートの投げ方やピッチングへの影響を聞かれたことがありました。その時、投球の幅を広げるために身に付けた方がいいとアドバイスしましたが、同時に「打者にぶつけることもあるし、外角を狙ったストレートがシュート回転して真ん中に入ることもある」と伝えました。美馬自身、リスクは覚悟していたと思いますが、積極的にシュートを使うようになりました。シーズンが進むにつれて、美馬のシュートは大きな武器となっていました。
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