無敗のエース・田中将大はなぜ打たれたのか

  • 中島大輔●構成 text y Nakajima Daisuke
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

吉井理人が見たシリーズ第6戦

 楽天の3勝2敗で迎えた日本シリーズ第6戦は、巨人が4対2で逆転勝利を飾った。楽天の先発・田中将大は160球の熱投で最後まで投げ切ったものの、今季32度目の登板で初黒星。巨人打線はなぜ、無敵の右腕を攻略できたのだろうか。元日本ハム投手コーチで、現FOXテレビ解説者の吉井理人氏に解説してもらった。

9回160球を投げ抜いた田中将大だったが、巨人打線に4点を奪われ今季初の黒星を喫した。9回160球を投げ抜いた田中将大だったが、巨人打線に4点を奪われ今季初の黒星を喫した。

 昨日の田中は、「自分で日本一を決めてやる」「負けるわけにはいかない」という気持ちが強すぎたように見えました。その結果がコントロールの乱れにつながったのだと思います。

 特にスプリットは、いいところに決まる場面とダメな時の差が激しかった。3回、一死一、二塁で長野久義を迎えた場面が典型です。3ボール1ストライクから外角低めのスプリットで空振りを取って追い込んだ後、もう一球続けましたがそれがど真ん中にいきました。結果的にショートゴロのダブルプレイで事なきを得ましたが、明らかに失投でした。

 序盤からスプリットのコントロールミスが多く、右打者に対してのツーシームも甘くなっていました。それが失点に結びついたのが5回表。先頭打者の坂本勇人に真ん中ツーシームを打たれ、ロペスには追い込んだ後、スプリットが一番打ちやすいコースに入り同点2ランを浴びました。そして左打者にはインコースの真っすぐが、力み過ぎて真ん中にいっていました。高橋由伸に打たれた勝ち越しタイムリーは、まさにその球でした。

 田中にとってスプリットは、真っすぐの次にいい球です。なので、序盤から積極的に使うというのはわかります。ただ、スプリットという球種は、低めに投げようと思うほど真ん中に入ってしまうことの多い球なんです。昨日の田中も、その意識が強すぎたんだと思います。

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る