2013.05.16

吉井理人が語る「投手の育て方にみるセ・パの違い」

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by Nikkan sports

大谷翔平はどんな投手に育っていくのだろうか? 今年も交流戦がスタートしました。昨年は巨人がセ・リーグのチームとして初の優勝を飾りましたが、これまでの交流戦を見てもわかるように、パ・リーグが大きく勝ち越しているのが現状です。この背景にあるのは間違いなく投手力。ここ数年、パ・リーグにはダルビッシュ有(現レンジャーズ)、岩隈久志(現マリナーズ)、杉内俊哉(現巨人)、田中将大(楽天)、成瀬善久(ロッテ)、涌井秀章(西武)など、球界を代表する投手がしのぎを削っていました。そうしたハイレベルの戦いを重ねていく中で、リーグ全体のレベルも上がってきたように思います。

 ではなぜ、パ・リーグはこうした投手が育ってきたのか。よく、「DH制があるからピッチャーはなかなか交代されない」といったことを耳にしますが、今の野球を見ていると、必ずしも当てはまらないような気がします。最近、パ・リーグの試合を見ていても「もう交代?」という場面をよく見ます。逆に、セ・リーグのピッチャーは意外と長いイニングを投げている。実際、前田健太(広島)は昨シーズン200イニング以上を投げていますし、内海哲也(巨人)や能見篤史(阪神)も200近いイニング数を投げている。世間のイメージほど、イニング数に関しては大きな差はないような気がします。

 ただ、投手を大きく育てるという意味で深く関係しているのが、球場の広さだと思います。パ・リーグはソフトバンクの本拠地であるヤフオクドームや、日本ハムの本拠地である札幌ドームなど、広い球場が多い。球場が広いと、ピッチャーは大胆な攻めができますよね。これは投手としてものすごく大事なことで、ある程度の開き直りは必要なんです。だからといって、何も考えずにただ投げればいいというわけではありません。もちろん、細心の注意を払いながら投げるのですが、そればかり気にしていると自分のピッチングができなくなる。自分らしさを出すという部分では、確かにパ・リーグはいい環境にありますね。

 私も現役時代にパ・リーグもセ・リーグも経験しましたが、いちばんの違いは配球でした。パ・リーグはピッチャーが不利なカウントになるとほとんどがストレート。対してセ・リーグはそうした時でも変化球を投げる。近鉄からヤクルトに移籍した時、キャッチャーの古田敦也に最初に言われたのが、「絶対にストライクが取れる変化球と勝負球の変化球、最低ふたつはほしい」ということでした。いま見ていても、そこの部分は基本的に変わっていないですよね。困ったらストレートという発想は、セ・リーグにはない。ひと言でいえば緻密ですよね。パ・リーグは強さを求め、セ・リーグは巧さが求められる。ここが大きな違いだと思いますね。