藤浪+榎田、そして......。阪神に「投手王国」の予感あり

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

高卒ルーキーながら開幕からローテーションの一角を担う藤浪晋太郎高卒ルーキーながら開幕からローテーションの一角を担う藤浪晋太郎 阪神タイガースが「投手王国」を築きつつある。4月26日現在、24試合を消化して13勝10敗1分。貯金はまだ3つだが、チーム防御率2.52はセ・リーグトップ。昨季17試合だったチーム完封勝利数はすでに7を数えている。これは12球団でダントツの多さだ。

 特筆すべきは、4月9日の巨人戦から12日のDeNA戦(いずれも甲子園)までの、4試合連続完封だろう。9日は能見篤史、12日はメッセンジャーがひとりで9回を投げ切り、残る2試合は鉄壁の投手リレーでスコアボードに0を並べた。10日は延長12回引き分けに終わったが、まさに「点を与えなければ負けない」の典型だった。12日の試合後、中西清起投手コーチに「投手王国ですね」と声をかけると、「いやいや」と謙遜したが、悪い気はしなかったはずだ。表情からは自信がうかがえた。

 その4試合の中には、今年から先発に転向したばかりの投手が投げた試合もあった。11日の巨人戦。先発は3年目の榎田大樹で、7回2/3をわずか2安打に抑えてみせた。

 もともと先発志向のあった榎田だが、過去2年はリリーフとして存在感を示していた。1年目は新人としては球団史上最多となる62試合に登板。リーグ2位の36ホールドポイントを挙げると、2年目も48試合に投げた。しかし、慢性的な左肘の痛みに悩まされるようになり、9月下旬に手術。その肘への負担軽減の意味もあり、今季から先発に転向した。

 キャンプ中の実戦では思うような結果が出ず、一時は開幕ローテーション入りが危ぶまれた時期もあったが、3月中旬、それまで一塁側を踏んでいたプレートの三塁側を踏むようになると、球筋が変わった。

「右バッターの内角に引っ掛けるボールが減って、肘への負担も減った。だから、長い回を投げられる」

 社会人時代に身につけたテンポのいい投球も手伝って、開幕から4試合で防御率0.61という抜群の安定感を誇っている。

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