2013.03.19

【WBC】3連覇ならず。準決勝で露呈した山本采配の限界

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by AFLO

プエルトリコに敗れ、3連覇を逃した侍ジャパン ひとつの走塁が日本の窮地を救ったのが日本ラウンドなら、ひとつの走塁ミスが日本の3連覇を阻んだのがアメリカラウンド準決勝のプエルトリコ戦だった。

 2次ラウンド初戦の台湾戦は、1点リードされた9回二死1塁の場面で鳥谷敬がスチールを成功させ、決勝ラウンド進出の足がかりを作った。一方、プエルトリコ戦では、2点ビハインドの8回一死1、2塁の場面で2塁走者・井端弘和と1塁走者・内川聖一が試みたダブルスチールが失敗に終わり、日本の追撃ムードに水を差した。ベンチから出されていたサインは、いずれも同じである。

「行けたら行け」

 モーションの大きい相手投手のタイミングを見計らって、「成功が確信できるのなら試みていいよ」というものだ。いわば作戦の断行を選手にゆだねた、サインであってサインでない作戦である。

 プエルトリコ戦の場面で井端は、一度はスタートを切るも、「一歩出たところで、タイミングが遅れた」(井端)と判断して立ち止まり、2塁に向かっていた内川が塁間で挟まれてアウトになってしまう。内川は試合後、ひとりで責任を背負い込み、「僕がすべてを壊してしまった......」と涙した。

 鳥谷が成功させた単独スチールとは異なり、ダブルスチールのタイミングはふたりの走者の意思疎通が必要不可欠なため、基本的にベンチによる指示があって成立しうるものだ。ところがあの場面では、明確な指示はベンチから飛んでおらず、井端の動きを見てから遅れて内川もスタートを切っていた。それゆえ内川が走塁を焦り、井端の帰塁を確認しなかったのも、致し方ないことといえた。

 そもそもこの場面、打席に入っていたのは阿部慎之助である。チーム発足以来、4番に据えてきた阿部に同点もしくは逆転の一打を期すのであれば、勝負に集中できるよう、むしろ「動くな」の指示こそふさわしかったのではないか。結果論ではあるが、中途半端なベンチの指示が、井端と内川、そして阿部の中に困惑を生んでしまったのは言うまでもない。