【WBC】侍ジャパン2009「イチロー、仲間と戦った37日」 (3ページ目)

  • 津川晋一●文 text by Tsugawa Shinichi
  • photo by Taguchi Yukihito

 ベンチに戻り、チームメイトがハイタッチで出迎えてくれると、とびっきりの笑顔がはじけた。折れかけていた心を支えていたのは、他ならぬ侍ジャパンの仲間たちだったのだ。

「チームの雰囲気、そりゃ上がりますよ。やっぱり打つべき人が打たないと」(岩村)
「イチローが打ってくれたことで、やっぱり盛り上がりましたよね、本当に」(稲葉)
「野球界の伝説的な人で、人間的ではないタフさを持っていると思ったが、あの喜びようを見て、彼も人間なんだなと思いました」(原監督)

 イチローさんが打たないときは、オレたちがなんとかする、そんな仲間たちを頼もしくも思っていた。

「それはそうでしょう。みんな頑張っているしねえ。折れかけの心を支えてくれているのは、みんなだっていうのは分かっていることだし」

 だから自分が犯したミスを、一丸となって帳消しにしてくれたプレイを心から喜んだ。前述の送りバント失敗でチャンスが途絶えたかに思われた場面のことだ。続く2番・中島が粘って四球でつなぎ、3番・青木がセンター前へヒットを放つ。二塁から岩村が生還して、貴重な追加点をあげた。

「本当に支えてくれてありがとう、という感じでしたね。あそこで流れを食い止めているのは完全に僕。それでさらに感染して伝染して影響すると、本当にもうシアトルのキップを買うしかなくなるので。ああやってチームメイトがつないでくれるっていうのは、うん、ステキですね」

 自分ひとりが先頭に立つことも、刺激的な言葉で鼓舞することも、もはや必要ない。3年という月日が経過し、前回大会とはイチローの周りも大きく様変わりした。実は、それこそが、彼自身が求めていたことだったのである。
 
僕にとっては、今日が日本での最後のゲーム

 ある決意を持って臨んだ大会だったのではないか――。そう思わざるを得ないワンシーンがある。

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