【WBC】吉井理人が語る「短期決戦を制する投手起用法」

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • 小内慎司●写真 photo by kouchi Shinji

吉井氏が投手陣のリーダーとして期待する内海哲也吉井氏が投手陣のリーダーとして期待する内海哲也 第3回WBCの日本代表メンバーが決まった。投手陣では抑え候補だった中日の浅尾拓也が右肩の不安によりメンバーから外れ、チームメイトの山井大介もWBC使用球に馴染めず落選となった。選ばれた投手は、杉内俊哉、内海哲也、山口鉄也、澤村拓一(巨人)、能見篤史(阪神)、前田健太、今村猛(広島)、涌井秀章、牧田和久(西武)、攝津正、大隣憲司、森福允彦(ソフトバンク)、田中将大(楽天)の13名。浅尾の落選により抑えが決まっておらず、先発候補だった前田も右肩の不安から調整が遅れており、まだ今後の見通しが立っていない。この状況の中、どのようにして投手陣を整備し、WBCに挑めばいいのだろうか。昨年まで日本ハムで投手コーチを務め、メジャー経験もある吉井理人氏に訊いた。

―― 今回のWBC日本代表の投手陣を見て、吉井さんの第一印象を聞かせてください。

「まず思ったことは、リリーフを専門にやっている投手が少ないということです。WBCは短期決戦で、しかも球数制限もある。つまり、どのように継投していくかが重要なわけで、シーズン以上にリリーフの重要性が問われると思います。よく、『先発投手は長いイニングを投げることができるから、短いイニングも大丈夫だろう』という声を聞きますが、準備の仕方が違うし、投球パターンも違う。まったく別物です。ましてや短期決戦だと、先発の調子が悪ければすぐに代えざるをえない。そうなるとリリーフはいつも以上に厳しい調整を強いられるわけです。WBCでは継投が大きなカギを握る気がします」

―― 前回の大会ではダルビッシュ有投手が準決勝以降、先発から抑えに回りました。当時、吉井さんは日本ハムの投手コーチでしたが、この配置転換をどう見られていましたか。

「最初は彼にとっていい経験になるだろうと思っていたのですが、試合を見ると、スライダーばっかり投げていたんです。これはフォームを崩すかもと思っていたら、案の定、崩れていくのが目に見えてわかってきました。シーズン前でしたし、これはちょっとヤバイかなと思いましたね。抑えになったことで、ランナーを出したくない、点を取られたくないという意識が強くなりすぎて、普段とは違うピッチングをしてしまった。いつもと違うピッチングをしてしまうと、フォームを崩しやすくなるんです」

―― 今回、抑え候補だった浅尾投手がメンバーから外れ、抑え不在の状況です。前回のダルビッシュ投手のように、先発の誰かを抑えに回す可能性は考えられますか?

「普通はしたくないですよね。いろいろなことを想定して、何で抑え候補をもっと入れておかなかったのかというのが正直な意見です。日本ハムの武田久でもいいですし、オリックスの平野(佳寿)が何で代表に入っていないのか驚きです。僕は、平野は球界ナンバーワンストッパーだと思っています。球は速いし、コントロールも素晴らしい。おまけにウイニングショットもある。理想の抑えです。彼がいれば、いろんな不安を解消できたと思うのですが......」

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