2012.12.19

【プロ野球】何のための制度導入だったのか?
育成選手の知られざる現実

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 佐賀章広●撮影 photo by Saga Akihiro

 大立は入団直後に“100”、その後は“016”という番号を背負っている。

 大立は岡山の県立興陽高出身。高3の夏、岡山大会で1試合21奪三振を記録して話題となったが、甲子園には届かず。その後、岡山商大で大学日本代表候補に選ばれるなど、地元では知られた選手だった。2009年秋のドラフト会議で、巨人から育成4位で指名される。しかし、入団直後からケガに泣かされ、1年目は実戦での登板はなし、2年目はファームで9試合のみ。そして迎えた3年目の今年、宮崎でのキャンプから、育成枠ながら一軍に帯同し、オープン戦でも登板のチャンスをもらった。そして開幕前には、ベテランの高木康成、 ルーキーの高木京介と並び、同じ育成出身の星野真澄と育成枠の大立の4人が、6、7回を凌ぐサウスポー候補として2つの一軍のイスを争っていた。シーズンが終わってみれば、高木康、高木京がその座を勝ち取ったのだが、星野は交流戦でプロ初勝利をマーク、大立も4月16日に支配下選手として登録され、“016”だった背番号は99に 変更されるなど、飛躍のシーズンとなった。一軍での登板はなかったが、5月にはフレッシュオールスターの出場メンバーにも選ばれる(ケガで辞退)など、150キロのストレート、キレのいいスライダー、チェンジアップは十分に評価されていた。大立は今シーズン、イースタンで23試合に登板し2勝1敗、23イニングスで25個の三振を奪い、防御率も2.35。三振の取れるサウスポーとして、今後に期待がかかっていた……はずだった。

 ところが、このオフ、その大立が巨人を自由契約となった。

 今年の10月5日、巨人はふたりのサウスポーの自由契約を発表した。そこには、星野と大立のふたりの名前があった。先述した通り、ともに育成枠で巨人に入団、その後、支配下登録を勝ち取った選手である。

 このニュースに違和感を覚えた。

 なぜなら巨人はその3日前、育成選手を含む10人に戦力外通告をしたと発表していたからである。そして3日おいて発表された星野と大立のうち、星野は育成選手としての再契約が濃厚だということだった。それならばいったいなぜ、大立は3日前に発表された戦力外通告の中にその名が含まれていなかったのか。

 意外な話を耳にした。

 大立は育成選手としての再契約を拒んだというのである。

 そんな話は初めて聞いた。弱い立場に立たされているはずの選手が、そんなふうに反旗を翻(ひるがえ)すのは珍しい。よっぽど鼻っ柱の強い選手なのかと思って、大立を訪ねた。