【プロ野球】ドラフト戦線異状あり。もはや高校生は即戦力!?

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

プロ1年目の武田翔太はここまで8勝をマークし、防御率も1点台と抜群の安定感を誇っているプロ1年目の武田翔太はここまで8勝をマークし、防御率も1点台と抜群の安定感を誇っている 2012年のプロ野球レギュラーシーズンも残すところあとわずかとなったが、今シーズンを振り返ると、高卒ルーキーたちの活躍が目立った1年だった。

 その筆頭がソフトバンクの武田翔太だ。7月7日の日本ハム戦でプロ初登板初先発を果たすと、以降11試合に先発し、ここまで(10月5日現在)8勝1敗、防御率1.07。抜群の安定感を誇り、新人王の期待も高まっている。

 そしてもうひとり、話題を集めたのが楽天の釜田佳直。5月の交流戦からローテーションに入ると、ここまで19試合に登板して7勝4敗、防御率3.28。活きのいい投げっぷりや、マウンドで感情を爆発させる姿は田中将大を彷彿させるが、結果もしっかりと残した。

 この他にも、歳内宏明(阪神)、西川健太郎(中日)、戸田隆也(広島)といった面々が高卒1年目ながら一軍のマウンドを経験。野手でも高橋周平(中日)がシーズンの大半を一軍で過ごし、高城俊人(横浜DeNA)は8月から先発マスクをかぶり続けている。さらに永江恭平(西武)、近藤健介(日本ハム)も先発出場を果たし、堂々たるプレイを披露。またファームとはいえ、桑原将志(横浜DeNA)は5月のイースタンリーグ月間MVP輝き、今村信貴(巨人)はイースタンリーグ史上21人目のノーヒット・ノーランを達成した。

 かつて「高卒選手は、3、4年はじっくりファームで鍛える」というのが球界の定説だったが、今シーズンの高卒ルーキーたちの活躍を見ると、定説は覆(くつがえ)されたように思える。ソフトバンクの永山勝スカウト部長は次のように語る。

「昔と比べて今の高校生は、肉体的にも技術的にもレベルは相当高いと感じます。ただ、そうした素質があっても、プロで活躍するにはメンタルの部分が大きい。例えば、武田に関していうと、素材的に素晴らしいことはボールを見ればわかります。僕がドラフト前に確認したかったのは、意識や考え方の部分でした。だから昨年、夏の大会が終わってからもスカウトを密着させ、練習を見るように指示しました。そこで最後の大会が終わったからといって手を抜いたり、いい加減な練習をしたりすると、指名するのも考えたかもしれません。でも、非常に勉強熱心で意識も高く、内面的にも絶対に大丈夫と確認できたから、1位(指名)で行くと決めたんです」

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