2012.10.03

【プロ野球】有望アマ選手のメジャー挑戦は、
本当に日本球界を空洞化させるのか?

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

国内か、メジャー挑戦か、去就が注目されているドラフトの目玉、花巻東の大谷翔平 今、ひとりの高校生が懸命に将来を見据え、進路について悩んでいる。野球をやらせたら、そのポテンシャルは天井知らずだと評価されている18歳。どれほど野球の才能に恵まれていたとしても、まだ社会に出たことのない高校生が、その仕組みや環境を知るはずがない。ならば、本人にとって悔いのない選択ができるよう、周りの大人ができる限りのサポートをするのは当たり前だろう。

 彼は日本のプロ野球に進むか、メジャーの球団に進むか、悩んでいるのだと聞いた。そのためにまずチームの監督と部長は、彼の獲得を希望する各球団の担当者と面談を続けてきた。すでにドジャース、レッドソックスなど複数のメジャー球団、日本でもライオンズ、ファイターズなど、いくつかの球団が花巻を訪問し、説明を済ませている。その後、本人も交えた面談も始まっているようだ。

 もちろん、花巻東高校の大谷翔平のことである。

 ピッチャーとしてだけではなく、野手としての評価もべらぼうに高い大谷は、日本のプロ野球がドラフト1位で狙う逸材である。同時にメジャーリーグの中にも、その類い稀なポテンシャルの高さを認め、獲得に動いている球団がある。とりわけ熱心なのがドジャースで、日本担当スカウトの小島圭市は大谷の入学直後からその才能に惚れ込み、彼の成長をずっと見守ってきた。大谷もメジャーへの思いは強く、日本の球団かメジャーの球団か「五分五分です」と話してはいるものの、本心はメジャー行きを希望しているのではないかと見る向きは少なくない。

 今まで、NPB(日本プロ野球機構)の球団からドラフト1位での指名が確実だと言われながら、いきなりメジャーの球団と契約した高校生はいない。思い出すのは3年前、大谷と同じ花巻東でメジャーか、国内かで揺れた菊池雄星のことだ。最終的にメジャーではなく国内を選択した菊池が、記者会見で「悔いはないか」と問われ、流した涙が忘れられない。あの涙はこの国の野球界に対して、彼が「これでいいんでしょ」と言っているように思えてならなかったからだ。高校生が最高峰の舞台に立つことを夢見て頑張り、その夢が叶う目前で、「とりあえず国内で」と訴える大人たちに外堀を埋められ、気づけばあきらめざるを得なかった現実。とりあえずというのも失礼な話だし、実際、ライオンズに入団した菊池は左肩を痛めるなど、紆余曲折のプロ生活を過ごしている。