【プロ野球】防御率No.1、吉川光夫(日本ハム)『6年目の覚醒』のワケ

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 ダルビッシュ有(レンジャーズ)が抜けて苦戦が予想されていた日本ハムだが、ここまで34勝25敗3分、首位ロッテに1.5ゲーム差の2位につけている(6月22日現在)。その好調の原動力となっているのが、6年目の左腕・吉川光夫だ。

 長いリーチを生かした角度ある球が最大の武器で、特に左打者のアウトローへ決まる球筋は、「糸を引くような直球」という形容がピッタリくる。さらに5月17日の阪神戦では全86球のうちストレートが57球と、変化球全盛の時代にあってストレートで勝負できる数少ない投手のひとりである。広陵高時代からストレートを高く評価されていて、2006年ドラフト1位で日本ハムから指名を受けた。

 1年目はシーズン後半からローテーションに入り4勝。日本シリーズでも高卒新人投手として、稲尾和久、堀内恒夫、石井一久以来の先発登板を果たした。しかし、大きな期待を背負った2年目が2勝に終わると、3年目から昨年までの3年間は勝ち星なし。周囲の期待に応えられず、伸び悩んだ。

 それが6年目の今シーズン、ここまで7勝を挙げ、防御率1.20もリーグトップ。本人は「技術的に変わったところはない」と繰り返すが、明らかに変わったのは、課題とされ続けてきた制球力のアップだ。オリックスのT-岡田がこんな証言をしていた。

「昨年までと変わったと思うのは、変化球でカウントが取れるようになったことじゃないですか。元々ストレートは良かったんですけど、変化球でストライクが取れるようになって、ストレートがさらに生きてくるようになった。今年対戦した時にそう感じました」

 実際、それは四球の数にも表れている。昨年は38イニングで20個、5年間通算でも208イニング1/3で109個だったが、今季はここまで67イニング1/3で23個。昨年までは制球力を気にするあまり、カウントが進むほど腕が振れなくなり、最後には置きにいったところを痛打されるケースが目立った。しかし、今年はどんな場面でもしっかり腕を振り切り、生きたボールを投げ続けている。

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