【プロ野球】「パ・リーグに行ってよかった」。初めての交流戦で斎藤佑樹が語った本音 (4ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 斎藤が痛恨の一発を浴び、野村が7回表のピンチで糸井嘉男をセカンドゴロに打ち取って、1-0とカープがリード。7回表にはまず斎藤に、そしてその裏には野村に代打が送られ、ふたりは大学時代の最後に投げ合った試合と同じイニング数でマウンドを下りた。

 1-0のスコアなのだから、最後までふたりで投げ切って決着をつけてほしいところだが、セ・リーグの野球はそうではない。チャンスがあれば代打が送られ、両チームの先発ピッチャーが揃って最後まで投げ切るゲームは滅多に見ることができない。そんなもどかしさについて、斎藤がこう言った。

「打席に立つと、小さい頃からやってきた、打って投げて、という純粋な野球を思い出して、『野球をやってるな』という感じがしました。でも(代打を送られて交代となったことは)接戦だったし、チームの作戦なんで仕方ないですけど、悔しさは残ります。パ・リーグに行ってよかったのかなとも思いました」

 試合はカープが1-0で逃げ切り、斎藤に負けが、野村に勝ちがついた。野村との投げ合いを振り返った斎藤は、こう言った。

「全体的にピッチングは悪くなかったと思います。前回(2回途中9失点)のピッチングがあったんで、どうなるかというのがあったんですけど、ある程度、元に戻ったかなという感じはありましたね」

 ファイターズとカープは6月5、6日、札幌ドームで対戦する。今度はDH制の試合となるため、代打を送られることもない。もし、ここでふたたび投げ合いが実現するならば、今度こそは、最後まで投げ切って決着をつける“佑と祐”を見たい。そういえば大学時代の試合後に書き込んだ取材手帳に、思わず吹き出しそうになる一節が書き込まれていた。

「斎藤と野村、似てるかも。ただしピッチングではなく、取材対応。ふたりとも相手の目を見て、質問に耳を澄ませるところ。つまらない訊き方をしたら、すぐに見抜かれるかも。さわやかだけど、したたかなふたり」

 そのくらいでなければ、プロでは勝てない。

 試合後、広島駅の近くでお好み焼きを頬張りながら、改めて爽やかな“佑と祐”のしたたかさを、しみじみと感じた夜だった――。

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