【プロ野球】カープ『ドラ1ローテーション』はいかにして完成したのか?

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 今年4月で70歳になったベテランスカウトの宮本洋二郎氏は、「必ずしも1位が活躍するわけじゃないけど、1位で入った選手が順調に育つというのは、やっぱりチームにとっていいことですよね。それにしても今の投手陣は私がスカウトになってから一番充実しています」と語った。

 入団前の評価と入団後の活躍が一致しないことが多いのもプロの世界だが、「順調な伸び」には何か理由があるのだろうか。ここで達川、宮本の両氏から返ってきたのが「マエケン効果」だ。もちろん、野村や福井とは年齢も近く、競争意識が好結果を生んでいることは想像できる。加えて、達川氏は次のように語った。

「もちろん前田は素晴らしい投手です。でも入団した当初は、ダルビッシュ(有)のように飛び抜けた才能があったわけじゃない。高校時代はPL学園のエースとして甲子園でも活躍しているけど、体も細かったし、びっくりするようなスピードもなかったし、球種が多かったわけでもない。だから周りの投手も、『自分も頑張れば、ああいうピッチャーになれるんじゃないか、近づけるんじゃないか』と思えたのではないでしょうか。前田は努力してここまで上り詰めたということで、そこが周りにもいい影響を与えている。野村にしても、前田の練習方法を取り入れたりしていますからね」

 さらに達川氏は続ける。

「野球に取り組む姿勢、試合での気構えもいいですよね。今は味方打線の援護は少ないけど、そこを嘆くのではなく、彼が覚悟を決めてマウンドに上がっています。『1対0で勝つのがピッチャーの仕事。自分が0点に抑えればいいんだ』と。エースのそんな姿を見たら、周りも頑張るし、野手陣だって何とかしたいと思うはず。彼の人間的な素晴らしさも大きいですよ」

 PL学園時代、スカウトとして前田を担当していた宮本氏からも同じような前田効果を聞いた。

「いくら素材がよくても活躍できない選手がいる中で、何が結果を分けるのか、我々はいつも考えています。その中で、前田を担当して僕自身も気づかせてもらったのが、内面の大切さです。練習に取り組む姿勢であったり、コミュニケーション能力であったり、目配りや気配り......。技術や体の強さはもちろんですが、目に見えない部分も備えた選手が結果を出していくのかな、と。野村や福井を見ていても通じるものを感じるところはあります」

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