【プロ野球】カープ『ドラ1ローテーション』はいかにして完成したのか?

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 ドラフト1位で評価されるような選手が内面も備えていれば、順調に伸びる確率は当然高くなるという。このような個人の資質に加え、今の広島の育成環境も「順調な伸び」に関係しているだろう。

 例えば前田は、入団1年目は一度も一軍で投げることなく、ファームのローテーション投手として、ウエスタンリーグ3位となる100回2/3を投げた。ちなみに、現在セットアッパーとして活躍している09年ドラフト1位の今村猛も、1年目はシーズンの大半をファームで過ごし、63回2/3を投げ、2年目から一軍の戦力となった。宮本氏は次のように語る。

「当たり前といえばそうなんですが、高校から入団した選手は、1年か2年はファームでしっかり土台を作ってから上(一軍)で投げるのが理想。前田がその形できっちり結果を出してくれたから、やっぱりこういうスタイルが大事だと、再確認させられました」

 そして達川氏は、コーチ陣の充実も挙げた。

「大野(豊)がピッチングコーチになって3年目になるんですけど、考え方が柔軟で、きっちりやらせるところはやらせながら、今の時代にあった練習も取り入れている。そこに山内(泰幸)という根気強く指導できる若手のピッチングコーチもいて、若い投手が力を発揮しやすい環境が整っていると感じます。試合で結果を出すという意味では、コーチ陣の存在は大きいですよ」

 広島には80年代前半に投手王国と呼ばれた時代があった。北別府学、川口和久、山根和夫、大野豊、津田恒美……。その後は、ドラフトの逆指名制度、FA制度の導入により、思うようなチーム作りができない時代もあったが、ドラフトもウェーバー方式に戻り、ようやくこれまでのようにいい人材を獲得することが可能になった。そういう流れの中で、軸が育ち、人材も揃い、伸びる環境も整ってきたのだ。

 最後に達川氏が、「『ひとり光る。みな光る。何も彼も光る』という言葉を知っていますか?」と聞いてきた。またしても答えに詰まっていると、「誰かひとりがコツコツ努力して光を放つようになれば、その姿を見てみんなが光りだす。さらに、みんなでそれを続けていると、何もかもが光りだす」と説明し、「今の広島投手陣がまさにこの状態でしょう」と言った。

 大黒柱・前田を軸にドラフト1位の才能豊富な投手陣が揃った「広島SEXTET」。投手王国復活とともに、21年ぶりのリーグ制覇ももはや夢ではない。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る