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【MLB日本人選手列伝】井口資仁 メジャー1年目から活躍で世界一 強心臓と卓越した順応性 (2ページ目)

  • 文/杉浦大介 text by Sugiura Daisuke

【新たな環境に即適応できる力量】

メジャー1年目の2005年は、ホワイトソックスの世界一に貢献した photo by Getty Imagesメジャー1年目の2005年は、ホワイトソックスの世界一に貢献した photo by Getty Images

 メジャー4年で打率.268、44本塁打、205打点という成績はNPBでの実績基準を大きく下回っているのは事実ではある。その点はこれまで渡米した多くの日本人野手と同じ。それでもいい働きをしたのは1年目だけではなく、ホワイトソックスでの2年目も打率.281、18本塁打、11盗塁と上質だった。あまり語られることはないが、2007年にフィラデルフィア・フィリーズの看板選手であるチェイス・アトリーの右手骨折後に代役としてトレードされたが、移籍以降は打率.304、出塁率.361と優れた働きをしたことも特筆すべき点だ。

 少年時代から定評があった持ち前の強心臓と器用さで、どういった状況でも仕事を果たし続けた。ホワイトソックス、フィリーズといった世界一チームで主力の仕事を果たしたのだから、やはり井口のアメリカでのキャリアは成功だったのだろう(注・2008年のフィリーズ優勝時は入団がポストシーズン登録期限よりもあとだっただけにプレーオフ出場はならず)。

「日本では福岡ダイエーでプレーした井口は20本以上のホームランを打ったシーズンが4シーズンもあった。渡米後の2005年には15本、2006年にも18本を打ったものの、アメリカではパワーが武器になるわけではないとすぐに悟ったのだろう。その役割とは二塁での堅実な守備と2番打者としての繋ぎの仕事だった」

 MLB.comのスコット・マーキン記者のこの評価は正しいが、新しい場所での役割にすぐに気づいたからといって、しっかりと実行できる選手がどれだけいるだろうか。その難しさは日本人野手の挑戦の歴史が証明している。それほど至難の仕事をやり遂げたのだから、井口の力量とハートの強さはもっと評価されてしかるべきに思えるのである。

【Profile】いぐち・ただひと/1974年12月4日、東京都出身。國學院久我山高(東京)―青山学院大―1996年NPBドラフト1位(福岡ダイエーホークス)。
●NPB所属歴(17年):福岡ダイエーホークス(1997〜2004)―千葉ロッテマーリンズ(2009〜17)
●NPB通算成績:1915試合出場/打率.270/1760安打/251本塁打/1017打点/176盗塁/出塁率.358/長打率.450
●MLB所属歴(4年):シカゴ・ホワイトソックス(2005〜07途/ア)―フィラデルフィア・フィリーズ(2007/ナ)―サンディエゴ・パドレス(2008/ナ)―フィリーズ(2008) *ア=アメリカン・リーグ、ナ=ナショナル・リーグ
●MLB通算成績:レギュラーシーズン=493試合出場/打率.268/494安打/44本塁打/205打点/48盗塁/出塁率.338/長打率.401 プレーオフ(2年)=15試合出場/48打数9安打打率.188/1本塁打/5打点/出塁率.291/長打率.271
●MLBでの偉業:ワールドシリーズ優勝2回(2005、2008)

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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