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【大谷翔平】メジャー通算1000安打の「4分の1以上は本塁打、約半分は長打」の背景にある打撃の心構えとは? (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【「我慢強く打席を送れるかどうか」の真意】

 試合後、大谷は「1000安打のうち、長打が約半分、本塁打が4分の1というのは、打者として理想的な配分か?」と問われ、意外な答えを返した。

「一番大事なのは、どれだけ四球を選べるかだと思います。もちろん技術も大切ですが、なかなかゾーン内に来ない時に、しっかり我慢できることが、打席全体として重要だと感じています」と語った。

 大谷翔平の打撃成績は二刀流復帰以降、やや下降傾向にあった。打率は.297から.276に、OPS(出塁率+長打率)も1.034から.987に下がっている。これについてドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、「二刀流復帰が2年ぶりであることの影響ではないか」と語っていた。

 では、本人はどう受け止めているのか。この問いについて、大谷は長く、ていねいに説明した。

「基本的には1番打者として打席に立っているので。シーズン前半はまだ数字が整ってこない時期でもあり、相手チームも比較的アグレッシブに攻めてくるシチュエーションが多かったと思います。自分としては、そんななかでも積極的に振っていくことでゲームを作っていく場面が多かったのかなと感じています。

 それが、(二刀流)復帰のタイミングあたりから数字も整ってきて、相手チームもポストシーズンを狙えるかどうかがはっきりしてくるなかで、状況によってはゾーンに投げてこないケースも増えてくる。そうした状況で、自分が我慢できるかどうかが一番大事だと思います。

 投げているかどうかに関係なく、我慢強く打席を送れるかどうか、そしてチームのために後ろの打者にしっかりとつなぐ意識を持ち、四球を選んで出塁すること。そういったことが、全体的に打席を構築するなかでは大切だと考えています」

 二刀流復帰後、周囲は「打撃成績が落ちた」と指摘する。しかし本人は、それを二刀流の影響とは捉えておらず、「相手投手の攻め方が変わったこと」が主な理由だと見ている。そして、そんな状況でも、1番打者としてボールを見極め、四球を選んで出塁することの重要性を強く訴えたのだった。

 ペナントレースは、いよいよ終盤戦に突入する。同じナ・リーグ西地区では、サンディエゴ・パドレスがトレードデッドラインで積極的な補強を行ない、直近10試合で8勝2敗と好調。ドジャースに2ゲーム差まで迫っている。ナ・リーグ全体ではミルウォーキー・ブルワーズが70勝44敗でトップ、ア・リーグではトロント・ブルージェイズが68勝48敗と好成績を収めている。

 一方のドジャースは、直近10試合で5勝5敗。通算成績は66勝49敗と悪くはないものの、戦力的に「最強」と評されながら結果が伸び悩んでいる。こうしたなか、大谷はただバットを振るだけでなく、1番打者としてボールを見極め、四球での出塁を通じてチームに貢献したいという強い意志を持っているのだろう。だからこその回答になったのだと思われる。

 実際、大谷は現在までに73四球を記録しており、自己最多だった2021年の96四球を上回るペース。シーズン終了時には102四球に到達する見込みである。

つづく

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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