ウルフ代理人が語った佐々木朗希の人生観とメジャー移籍を「今」決断した理由 (2ページ目)
【「ロウキを説得できる人は誰もいない」】
ウルフ代理人はそう語り、「今後、何があるかはわからない。いずれトミー・ジョン手術を受けることだってあり得る」とも話していた。実際に佐々木はこれまでさまざまな故障に見舞われてきた投手であり、その耐久力の乏しさゆえに"メジャーへの準備"という面では疑問が呈されてきた。逆にいえば、このようにいつ大きな故障があるかもわからないからこそ、なるべく早く最終目標の場所にたどり着き、そこでの成長を臨んだ部分があったのだろう。
自身の意思、希望を貫き通す過程で、異論、批判が出てくるのは覚悟のうえだった。ほかならぬウルフ氏ですらも、「非常に困難になることはわかっていたし、(当初は)実現させるために何かできると、彼に保証もできなかった」と振り返ったほどだ。それでも「彼は、メディアから多くの批判を受けることになるとわかっていたし、実際に批判された。それでも決意を固め、決してあきらめなかった」と続けた百戦錬磨の代理人の言葉からは、わが道をゆく佐々木の姿勢へのリスペクトが確実に感じられた。
「ロウキを説得できる人は誰もいない。ロウキが私たちを説得する。彼は自分で自分の船を操縦し、彼がボスだ」
すでに争奪戦は動き出しており、当然のように多くのチームが獲得を目指すと明言している。ロサンゼルス・ドジャースが本命、サンディエゴ・パドレスが対抗馬という見方が一般的だが、かといってアメリカ西海岸が希望というわけではない。東海岸の雄、ニューヨーク・ヤンキースもすでに全力で獲得を目指すことを表明している。前述の通り、マイナー契約ゆえにセオリー上は全チームの争奪戦参加が可能であり、ウルフ代理人はスモールマーケットのチームに行く可能性も打ち消してはいない。
「彼がこれまでメディア絡みで楽しい経験をしていないことを考えると、小規模か、中規模マーケットのチームのほうが着地点としてより有益かもしれないという議論もある」
このようにさまざまな意見、議論があるなかで、"チームロウキ"の船長はどのチームを選び、その理由をどう説明するのか。文字どおり、全米が注目する"ディシジョン(決断)"。現状で確かなのは、どんな結論を出そうと、最終的にはそれは佐々木自身の決断だろうということだけだ。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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