「1番・DH」大谷翔平はその打棒でドジャースを頂点に導き、野球選手の概念を再定義するのか? (2ページ目)

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

【ジャッジも及ばない長打数】

 2024年は、投手としてはリハビリのシーズンで、打者に専念。結果的に打者としてさらなる飛躍を遂げた。持ち前のパワーに加えて、確実性も備わった結果、シーズンの塁打数(411)、長打数(99)はアーロン・ジャッジすらマークしたことがない、現役選手のなかではキャリア最高の数字である。54本塁打、59盗塁で史上初の「50-50」はもちろん、本塁打、打点(130)の二冠、打率.310もナ・リーグ2位で三冠王にも迫った。

「打席で、こんなにいい感覚は過去にもあったか」と尋ねられると「感覚はあると思います」と答えている。

「もちろん年齢を重ねるごとに打撃の技術も上がってくる。フィジカルもそうですけど。地力みたいなものが少しずつ形になっていると思います」と分析する。

 ストライクゾーンの見極めもできている。

「よい時はストライクゾーンを維持できていると思うので、単純に調子がいい。振るべき球を振って、打った時によい結果が出るのは構えもいいし、スイングの軌道自体もズレてないんじゃないかと思います」

 シーズンを通してプレーし、重要なゲームで活躍できていることについては「最後の最後までそういう試合ができることに感謝したい。ここまで健康を保って、今日も全部しっかり出られたことが一番じゃないかと思う」と25日の試合後に話した。今シーズンはキャリア最多の159試合をプレーし、最多の731打席に立っている。

 そんな大谷を絶賛するのは、長年ドジャースの看板選手だったクレイトン・カーショーだ。6歳下の後継者の姿をこの1年間見守ってきた。

「彼がチームの勝利を大事にしているかは明らか。特に最近の大きな試合でのエネルギーを見るのは楽しい。勝ちたいという強い思いを持っており、ポストシーズンに向けた興奮が伝わってくる。本当にすばらしい。彼の勤勉さにも感銘を受ける。疲れているように見えたことはないし、疲労を口にすることもない。毎日が同じ。リハビリをして、ウォームアップをして、トレーニングをして、打席に立って、盗塁をして、本塁打をかっ飛ばす。次の日も全く同じことを繰り返す。

 私自身、一貫性と細部へのこだわりを重視してきたが、彼は誰よりもそれをしっかり実践している」

 筆者はカーショーがデビューした2008年から取材しているが、これだけほかの選手を称賛するのを聞いたのは初めてだ。

 2023年の地区シリーズの敗北のあと、ロバーツ監督は「我々は公式戦ではすばらしい結果を残しているが、最近のポストシーズンではうまくいっていない。何かを解決しなければならない」と訴えた。そして、出した解決策はオフの12億ドル(約1740億円)の大型補強だった。

 すべてが思いどおりに運んでいるわけではないが、大谷については期待をはるかに上回る。そして10月は「1番・DH」で世界一への牽引役を務める。

 大谷は自身初の大舞台で、野球選手の概念を再定義するのか。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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