大谷翔平の記録はどこまで伸びる? 現地番記者が語る「60-60」の可能性 (2ページ目)

  • 杉浦大介⚫︎取材・文 text by Sugiura Daisuke

【最終的には57-56?】

MLB.comのドジャース番記者・トリビオ氏 photo by Sugiura DaisukeMLB.comのドジャース番記者・トリビオ氏 photo by Sugiura Daisukeこの記事に関連する写真を見る

 とはいえ、当たり前のことだが、40以上の盗塁は誰にでもできることではない。50盗塁以上の選手が数多く出てきているというのであればその価値は目減りしてしまうかもしれないが、2024年は翔平とエリー・デラクルーズ(シンシナティ・レッズ、65盗塁)だけだ。付け加えるなら、今季の翔平の盗塁成功率の高さも見過ごせない。その数字は、状況を見計らいながら走っていることの証でもある。それに加えて50本塁打も打っているわけだから、これはもちろん大記録だ。

 翔平の状況判断力を考えれば、ドジャースが"いつ走っても構わない"というグリーンライト(青信号)を与えてきたことは驚きではない。翔平がハイペースで走り始めたのは、1番打者になってから。ムーキー・ベッツが故障離脱した6月頃から盗塁数が急増していった。ベッツ不在では必然的に攻撃の武器は減るわけで、チームから必要とされての盗塁増加でもあったわけだ。ベッツ、フレディ・フリーマンが打線に名を連ねているときは、時に打てる球を見送ってくれた彼らのサポートゆえに盗塁が増えたところもあったのだろう。その一方で、翔平が先の塁に進めば、ベッツ、フリーマンは打点を稼ぐチャンスが増加する。

 翔平のベースランニングの速度自体は最高級というわけではないというデータもある。それでもこれほど高確率で盗塁を決めた要因として、相手投手を研究し、傾向を見抜くのが上手なクレイトン・マッカロー一塁ベースコーチを讃えなければいけない。そういった背景を振り返れば、「50-50」を成し得る過程でチーム全体の支えはやはり大きかったし、同時にチームにとっても本当に意味のある記録だったというのが私の考え方だ。

 シーズン終盤、ドジャースが地区優勝に辿り着けるかとともに、翔平がどこまで個人記録を伸ばせるかにも注目が集まるだろう。無事に地区優勝を飾ったら、翔平も1日くらいは休むんじゃないかと思う。たとえば24日のサンディエゴ・パドレス戦で優勝を決めたら、その翌日は休養となるかもしれない。敵地コロラドでのロッキーズ戦も、もしかしたら1戦くらいは抜けるかもしれない。もっとも、地区優勝をすればプレーオフは地区シリーズからのスタートとなり、いずれにしても4、5日間のブレイクが挟まるわけだから、休みは不要という考え方もある。

 ともあれ、翔平はほとんどのゲームをプレーするはずだ。今の調子ならシーズン最終盤も例えば5試合連続本塁打を打つとか、再び大爆発しても個人的には特に驚かない。なかでもコロラドは打者優位の場所ゆえ(編注/標高が高く打球が飛びやすい環境にある)、何が起こっても不思議はない。そうなったら「60-60」にも迫っていくわけで、また大騒ぎになるだろう。

 現実的には本塁打は56、57本、盗塁は55、56個くらいまでじゃないかなと思う。イチローの持っている56という日本人選手のシーズン盗塁記録を知っているのだとすれば、翔平はその数字を目標にしてくるのかもしれない。来季は投手としてマウンドに戻るわけで、盗塁の記録を伸ばせるのは今季が最大のチャンスという背景を考慮すれば、それはなおさらだ。

 本当に目が離せないだろうから、私も翔平の一挙一動を最後まで楽しみにしておきたい。

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

大谷翔平フォトギャラリー SHOW TIME! in エンゼルス

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