苦しい時を経て前に向かうヌートバー 大谷翔平、ダルビッシュらに刺激を受け、終盤戦は好調を維持 (2ページ目)

  • 杉浦大介⚫︎取材・文 text by Sugiura Daisuke

【再び自信を取り戻して】

 もっとも、そうは言っても、カージナルス周辺でのヌートバーへの期待感が消滅したわけではない。『セントルイス・ディスパッチ』紙のカージナルス番記者、デリック・グールド記者はこう証言する。

「まず健康で過ごせることを証明しなければいけないから、契約延長の話はしばらく持ち越しだとは思う。それでもチーム内でのラースへの期待感は変わっていないよ。パワーがあって守備もいい左打ちの外野手は、貴重な存在。このチームには必要だ。だから今季の不調のあとでもトレードでの放出は考え難い」

 冒頭で述べた通り、厳しいシーズンの中でもヌートバーはそのポテンシャルの高さを随所に見せている。これほど休みがちながら、四球数はチーム2位。ハードヒット率の高さ、守備の良さ、そしてチームの起爆剤になれるパーソナリティまで含め、まだ伸びしろを十分に残した選手であることに変わりはない。

 2024年は停滞のシーズンであっても、致命傷ではない。コンディションさえ整えれば、まだまだ明るい未来は見えてくる。それを自身でも自覚しているからこそ、前向きな言葉が躊躇なく出てくるのだろう。

「今の僕はコンプリートヒッターになろうとしている。大切なのは上質なスイングとコンタクトを追い求めること。チーム、個人の両面で今季を力強く締めくくりたい。いいプラン、アプローチを持って、いい打撃を続けていきたい。これから何が起こるかはわからないが、目標を持って日々を過ごしていきたい」

 ポストシーズンには届かなかったとしても、ヌートバーにとってシーズン最終戦まで大切な時間が続くことに変わりはない。ケガで少なからずの時間を失った後であれば、その重要度はなおさら。日本で愛され、セントルイスのファンも熱くできる好漢が少しでもいいイメージで今季を終えられれば、その勢いを勝負の2025年に繋げていくことは十分に可能なように思えてくるからだ。

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る