大谷翔平が「40-40」達成、30球団最高勝率もドジャースの現状は苦しい? カギは山本由伸の完全復活 (4ページ目)

  • 奥田秀樹●Text by Okuda Hideki

【守備と走塁も武器もやはりカギは......】

 三塁ベースコーチのディノ・イベルは58歳。ドジャースのマイナー球団で17年間コーチを務めた後、メジャーではエンゼルスとドジャースで19年のコーチ経験を持つ大ベテランだ。彼は現在のドジャースの野手陣を高く買っている。まずは守備だ。

「ムーキーは今年遊撃手でプレーし、ポジションを学びながら頑張っていたけど、ケガをしてしまった。ムーキーの望みはただ勝つことなので、ゴールドグラブ賞の右翼手として戻ることも受け入れた。ミゲル・ロハスとラックスの遊撃、二塁でのプレーは素晴らしいし、フレディ・フリーマンもいい。外野は中堅にゴールドグラブ賞のキアマイアーが加わったし、中堅も遊撃も二塁もできるスイッチヒッターとしてやはりゴールドグラブ賞のエドマンが加わった。近年のドジャースでもベストの守備陣になったと思う」と目を細める。

 8月10日のピッツバーグ・パイレーツ戦、相手投手は100マイル(160キロ)の剛腕ポール・スキーンズでポストシーズンのような雰囲気だったが、守備で好プレーが続き、1失点に抑え、打っては少ないチャンスをものにし、スキーンズから4点をもぎ取った。パイレーツのデレク・シェルトン監督は「守備の差で負けた」と悔しがっている。

 シーズン序盤から大谷の「40―40(フォーティ・フォーティ/40本塁打・40盗塁)」を「本人が望めば達成できる」と予言していたイベルコーチは、キアマイアーとエドマンの加入は、足で得点する機会が増えると歓迎した。「翔平がやっているように、盗塁を狙ったり、単打で一塁から三塁へ積極的に進塁したりといったプレーが増える。そういうスピードを生かしたプレーが頻繁に出れば相手守備陣にプレッシャーをかけられ、ミスを引き出すこともできる。ポストシーズンでとても役立つ」と期待する。

 キアマイアーは通算132盗塁で、成功率は77.2%。エドマンは107盗塁で86.3%である。プラスふたりともポストシーズンの経験も十分にある。「ベテラン選手をラインアップに加えることで、彼らの経験が生きる。勝つために何をすればいいか知っているし、大舞台のプレッシャーにも慣れているから」。キアマイアーはポストシーズンに31試合、エドマンは15試合の出場経験がある。

 そんなチームの雰囲気のなか、大谷も勝つことに集中している。8月23日のタンパベイ・レイズ戦、9回裏の劇的なサヨナラ満塁本塁打で史上6人目の「40-40」を達成したが、試合後記録を意識していたかと聞かれると「それが目的にならないように。しっかりと勝つための手段として、盗塁もやりたいなと思っている。盗塁に関しては失敗しないことが第一」と話した。さらに「50―50(フィフティ・フィフティ)」についても「もちろん数が増えるということは、勝つ確率が高くなってくるということ。ここからもっともっと大事な試合が多いですし、自分の数字が上がると同時にチームが勝てるように頑張りたい」と真剣な表情で答えている。

 一番に優先すべきは昨年12月の入団会見で話した通り、ポストシーズンに出て、勝ち進むこと。同地区のダイヤモンドバックス、パドレスも絶好調だし、気は抜けない。24日のレイズ戦は先発のカーショーが5回9安打5失点と攻略され、5回にはいったん逆転したものの、終盤にリリーフ陣が打たれ、延長10回の末8対9と敗れた。大谷が40-40を達成した23日の試合も先発のボビー・ミラーが序盤に3失点し、なんとか追いついて、9回裏の満塁本塁打でかろうじて勝った。

 つまり今のドジャースは、不安定な先発投手陣を打線がカバーして、戦っている状態。ポストシーズンには進出できるだろうが、10月は、グラスノーや山本が復活して本来のピッチングを取り戻さない限り、厳しい戦いになるのである。

著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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