「大谷翔平の打球音はショットガン」ドジャースタジアム場内アナウンサー、トッド・ライツが語る「SHOHEI OHTANI!」の衝撃

  • 奥田秀樹●取材・文 text by Okuda Hideki

ドジャースの場内アナウンサーの人生においても、大谷翔平は特別な存在だ photo by USA Today/Reuter/AFLOドジャースの場内アナウンサーの人生においても、大谷翔平は特別な存在だ photo by USA Today/Reuter/AFLOこの記事に関連する写真を見る

 トッド・ライツさんはロサンゼルス・ドジャースのPA(PUBLIC ADDRESS)アナウンサーだ。スタジアムのいわば司会進行役で、試合開始30分くらい前から試合終了時まで、観客や参加者に対して重要な情報やアナウンスを随時行なっている。なかでもファンの耳に残るのは、試合開始前の力強いラインナップ紹介だ。

「And now, the starting lineup for your Los Angeles Dodgers, chosen by Dodgers manager Dave Roberts.Leading off shortstop number "50" Mookie Betts. Batting seconds, designated hitter number "17" Shohei Ohtani. Batting third first baseman number″5 "Freddie Freeman...」

 美声が球場いっぱいに響き渡るとともに、ファンの熱気と興奮が高まっていく。日本でテレビを見るファンも、試合中、大谷翔平の打順が回ってくるたびに「Designated hitter number "17" Shohei Ohtani」のアナウンスを耳にしているだろう。

 若い頃は、俳優としてTVやコマーシャルに出演していたというライツさんに、PAアナウンサーとしての仕事について、話を聞いた。

【「何度聞いても興奮させられる」】

――試合開始前、あなたが先発ラインナップを読み上げるとき、スタンドの5万人の大観衆が沸き上がります。

ライツ 私の仕事で、最も大好きな部分のひとつです。試合が始まるとき、そして試合中に「ショーヘイ・オータニ」とアナウンスしたとき、大観衆のうねりを感じます。私の声に反応して感情や反応がスタンドに波のように広がっていく。これまでに感じたことのない、もうひとつ上のレベルですね。

 私の尊敬する実況アナウンサー(TVやラジオの中継アナ)、ビン・スカリー氏は「大観衆の歓声やどよめきを聞きたくて、何十年もこの仕事を続けてきてしまった」と話していましたが、私もその気持ちがわかります。「ショーヘイ・オータニ」と叫んだ瞬間、人々の一体感に、スタジアムが揺れる感覚になる。何度聞いても興奮させられるし、ゾクゾクします。

――ドジャース1年目の大谷を見てきて、印象は?

ライツ 畏敬の念を抱いています。そして来年、二刀流として復活したらどうなるのかと思いますよ。投げては100マイル(160km)の剛速球、打っては誰よりも強くボールを叩いたかと思うと、バントでスピードを生かす。私の見たなかでは最高の野球選手だし、一生のうちにお目にかかれるかどうかというレベルの選手です。

 特に衝撃的なのは、ボールがバットに当たったときの音が、ほかの打者とまるで違うこと。ショットガンのような、非常に大きく、鋭い破裂音で、球場全体に響き渡る。近い音は、以前ドジャースにいたコディ・ベリンジャー(現在はシカゴ・カブス)の打球でたまに聞きましたが、翔平についてはすでにたくさん聞いています。

――ファンの盛り上がりは、これまでとは違いますか。

ライツ 大谷と山本が入ったことで、明らかに日本人ファンがスタンドに増えました。それは新しいグループで、1980年代前半のフェルナンドマニア(*1を思い起こさせます。ドジャースのブランドが世界に広がり、MLBファンを増やすことができた。日本のファンは本当に野球が大好きで、熱心だと知っているので、彼らをこの球場にたくさんお迎えできていることがとてもうれしいですね。

*1/メキシコ出身の左腕投手。1980年にドジャースでメジャーデビューし、81年にはサイ・ヤング賞と新人王をダブル受賞、ワールドシリーズ制覇の原動力に。10年間の在籍期間で162勝を挙げ、ヒスパニック系アメリカ人の英雄的存在である。

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著者プロフィール

  • 奥田秀樹

    奥田秀樹 (おくだ・ひでき)

    1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。

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