大谷翔平を取材しつづけるアメリカ人記者が指摘「誰もが悩まされてきたこと」とは? (2ページ目)
【エンゼルス担当の若手記者が思うこと】
サム・ブラム記者は『ジ・アスレチック』のエンゼルス担当で若くて精力的な人物だ。
二刀流・大谷の偉大な活躍を毎日取材してきた。2022年、大谷はMVPに選ばれなかったが、ブラム記者は投票権を持っていた30人の記者のひとりで、大谷に1位票を投じた。「NBAで言えばマイケル・ジョーダンやレブロン・ジェームスのようなもの。(MVPに選出された)アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)とも別のレベルだと思った」と投票理由を筆者に説明している。
だが同時に、1対1で話す機会などは限られ、大谷との距離を狭めるのは難しいと悔しがっていた。そして今季はエンゼルス担当であるため、ドジャースに移った大谷を取材することはできなくなった。
ただ、大谷の会見についてはエンゼルス戦の前だったから取材できたし、会見後、大谷がフィールドに出てキャッチボールをする姿も見られた。3月26日の記事では「ボールを投げたのは、昨年9月のヒジの手術以来。あの時から球団も、水原一平の存在も変わった。しかし、ひとつだけ全く変わらないことがある。野球に集中するために、大谷が全世界をシャットアウトする能力だ」と記している。
筆者は大谷がこれからもMLBで活躍を続け、ベーブ・ルースのように野球を発展させる歴史的な選手になりうると考えている。そして日本から来たヒーローの実像に迫るべく米国のスポーツライターたちも努力を続ける。
今回のスキャンダルはないほうがよかったのだが、大谷も他者との関わり方について考える契機になっただろうし、メディアもあらためて「大谷翔平とは何者なのか?」と深く考察することになった。
両者が距離を狭めていければと期待している。
プロフィール
奥田秀樹 (おくだ・ひでき)
1963年、三重県生まれ。関西学院大卒業後、雑誌編集者を経て、フォトジャーナリストとして1990年渡米。NFL、NBA、MLBなどアメリカのスポーツ現場の取材を続け、MLBの取材歴は26年目。幅広い現地野球関係者との人脈を活かした取材網を誇り活動を続けている。全米野球記者協会のメンバーとして20年目、同ロサンゼルス支部での長年の働きを評価され、歴史あるボブ・ハンター賞を受賞している。
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