大谷翔平の2年連続MVPはまだ可能か。ヤンキースのジャッジが圧倒的優位な理由と、それを脅かすために必要な成績は? (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Kyodo News

MVP争いで重要な「WAR」

 それでも現時点で、MVP争いではトップを走るジャッジにかなり差をつけられている印象があり、今後の逆転も容易ではないだろう。そう考えられる要因のひとつとして、まずWAR(Wins Above Replacement)の数値があげられる。

 最近は日本のファンも、WARという指標をよく聞くようになったのではないか。それぞれの選手の価値を総合的に測り、控えクラスの選手に比べてどれだけの勝利数を上積みできるかを示すこの数字は、近年のMVP、サイ・ヤング賞といった個人賞制定の際に重視されてきた。

 昨季の大谷は野手で5.1、投手で3.0を記録し、合計WARはメジャーベストの8.1。野手、投手に限定すればそれぞれより優れた数字を残した選手がいたが、合計では誰も大谷に及ばなかった。ひとりで2選手分の働きを示す二刀流の価値をわかりやすく示したこの指標が、大谷の満票でのMVP受賞を大いにサポートしたことは言うまでもない。

 今季の大谷も、野手で2.7、投手として4.0、総合すると6.7という高数値ではある。ただ、投打をプラスして考えても、ジャッジの8.0という見事な数値には及ばない。この差は大きく、残りゲームのなかで急激に詰めない限りはMVP争いでの逆転は難しいはずだ(注・WARはFanGraphs算出のもの)。

 さらに、ジャッジの評価が他を圧倒し続けるだろう理由のもうひとつは、終盤戦もマイルストーン(節目)に向けて話題を独占しそうなことだ。

 ホームランのペースは"ステロイド以前"のメジャー記録だったベーブ・ルースの60本、ロジャー・マリスの61本をも上回る。バリー・ボンズ、マーク・マグワイアが薬の力を借りて粉砕したものの、「61」という数字はのちに再評価されている。それが近づいた頃には、ジャッジのすべての打席に注目が集まるだろう。

 昨季、大谷が二刀流でセンセーショナルな存在になったのと同じように、メジャー全体で打撃成績が落ちている今季に飛び抜けた成績を残しているジャッジも特別な存在感を醸し出している。ヤンキースがハイレベルなチームが揃う地区の首位を独走していることもあって、"2022年はジャッジの年"という雰囲気が少しずつできていることも事実だ。

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