大谷翔平のアッパースイングは理想的。アッパースイングが流行した背景と断トツ1位のデータ (4ページ目)
アッパースイングの増加に伴って、ホームランの数は激増しました。2017年にメジャー全体で6105本も打って話題になったかと思えば、2019年には6776本と史上最多の記録を更新しています。
そこでMLBは今年、本塁打数の増加を抑えるために低反発球を導入しました。2021年は2019年に比べると、約11%もホームラン数が減少しています。しかしそれにもかかわらず、大谷選手は驚異的なペースでホームランを量産しているのです。
大谷選手が今季メジャーでトップのホームラン数を放っているのは、前述のバレルゾーンの領域をしっかりと捉えていることも大きいと思います。
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どれだけバレル(打球速度が約158キロ以上で角度26〜30度の打球)を記録しているかを示す「バレル率」を見てみると(8月9日時点)、大谷選手は断トツのメジャートップの24.8%。2位フェルナンド・タティス・ジュニア(サンディエゴ・パドレス)の22.1%を大きく引き離しています。ちなみに大谷選手と本塁打王争いを演じているブラディミール・ゲレーロ・ジュニア(トロント・ブルージェイズ)は16.0%で10位です。
メジャーで高い信頼度を誇る「バレル」という指標をもとに、今季のホームラン王争いを見るのも楽しいと思います。アッパースイングが流行した背景も踏まえると、大谷選手は今のメジャーリーグにおいて理想的なスイングと言えるのではないでしょうか。
プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)
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