あれから10年。フィリーズ世界一メンバーが
今も田口壮に感謝していること (2ページ目)
この年、フィリーズの野手陣は筋肉ムキムキの精鋭が揃っており、ハワードの47本塁打を筆頭に、ワース、チェイス・アトリー、パット・バレルらも20本以上のホームランを記録。ナショナル・リーグトップの214本塁打をマークした。その一方で、田口のように入念に体のケアをしている選手は皆無に等しかった。
体をケアする重要性は、選手のみならずマニエル監督にも影響をおよぼした。「ソウがよく言っていたことがあります」と、マニエルが振り返る。
「『Body knows everything(体はすべてを知っている)』と、ソウはいつも言っていました。どういう意味かというと、体は今どんなコンディションでいるのかを伝えてくれると。私にとってすごくいいアドバイスとなり、チーム全体として、練習やその取り組み方など、どうやったら勝てるのかを考えさせられました」
その年の7月22日、敵地でのニューヨーク・メッツ戦で田口は同点の9回に2点タイムリー二塁打をライトに放つなど、さすがの活躍を見せた。しかし、このシーズンは88試合しか出場機会がなく、91打席で打率.220、本塁打0、打点9、盗塁3という結果に終わっている。
ところが、ポストシーズンでもマニエル監督は試合に出場できる25人枠のなかに、必ず田口の名前を書き込んだ。
「もちろんです。彼はバントなど、細かいことがうまくて、ボールに当ててほしい時には必ずなんとかしてくれました。それに四球を選んだり、走塁もうまかった。レギュラーシーズンでもっと使いたくならなかったのかって? もちろん、あったよ。でも、彼はそんなことで不平不満を言うことはまったくなかった。試合に出るのか、出ないのかわからない日でも、彼は常にベストの状態で試合への準備を怠りませんでした。私たちにとってかけがえのない選手でした」
田口がチームにもたらしたのは、体のケアや機動力だけでない。当時のフィリーズにもっとも必要だった"経験"を田口は持っていた。
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