大谷翔平の課題は腰にあり。名コーチが送る対左投手攻略の意外な助言

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第26回

 長いメジャーリーグのシーズンも、残すところ1カ月となった。"二刀流"としてメジャー挑戦を果たした大谷翔平(エンゼルス)にとっても、この1年は特別なものになったに違いない。シーズン途中、右ヒジの故障が発覚し、長い間マウンドに立てない時期もあったが、打者としてはここまで15本塁打を放つなど、十分な成果をあげた。バッティングにおける大谷のすごさとは何なのか? 名打撃コーチとして何人もの選手を一流に育て上げた伊勢孝夫氏に、大谷のバッティングの特徴について語ってもらった。
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8月は月間6本塁打を放ったエンゼルスの大谷翔平8月は月間6本塁打を放ったエンゼルスの大谷翔平 今季の大谷翔平を見て、あらためてこの選手のすごさを感じている。結論的に何がすごいのかと言えば、彼の対応能力とそのスピードだ。

 大谷が明らかに不振に陥ったと思われたのが、7月下旬、オールスター明けの頃だった。空振り三振とセカンドゴロが目立つようになり、一時期3割あった打率も2割6分台まで落ち込んでいった。

 とくに印象的だったのは、7月26、27日(日本時間)のホワイトソックス戦。26日の試合でホームランを打ったかと思えば、翌日は三振を含む5打数ノーヒット。以後、1試合で複数の三振も珍しくなくなった。バッティング内容を見て、「これは深刻だな。ちょっと長くなるかも」と思ったものだ。

 ズバリ、ポイントは「腰の開き」にあった。右投手、左投手に関係なく内角を攻めてくるようになってから、余計にインコースを意識的に捌こうとしすぎて、腰が開き気味になった。だから、アウトコースの球も引っかけるようになり、セカンドゴロが量産されたわけだ。

 近年メジャーでは、打者により極端なシフトを敷いているが、1年目の大谷でさえ二塁手が一、二塁間を詰め、二塁ベース付近に遊撃手が守る"大谷シフト"が敷かれるようになった。それだけ大谷の打球が右方向(ライト方向)に集中している証拠だ。

 それでも逆方向(レフト方向)に打球がいかないのは、大谷が意地になって引っ張っていたからではない。逆方向に打ちたくても、腰が引けてしまっているためにできなかったのだ。

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