打撃に悩む大谷翔平に名コーチが言う。「インコースは捨ててしまえ」

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

名コーチ・伊勢孝夫の「ベンチ越しの野球学」連載●第21回

 今シーズンからロサンゼルス・エンゼルスに移籍し、メジャーでも"二刀流"に挑む大谷翔平。だがオープン戦での姿を見る限り、投打ともメジャーの野球に苦しんでいるようだ。この現状は、名コーチとして鳴らした伊勢孝夫氏の目にどう映ったのか。はたして、打開策はあるのだろうか。

(●第20回「打球の角度」は松井秀喜を超えた。 名コーチも唸る清宮幸太郎の弾道>>)

オープン戦でなかなか結果が出ないエンゼルスの大谷翔平オープン戦でなかなか結果が出ないエンゼルスの大谷翔平 二刀流としてメジャーに挑戦している大谷だが、私は渡米前から投手としては通用するが、打者としては難しいのではないかと思っていた。その考えは、オープン戦を見ても変わらない。

 投手としては、まだ新しい環境への適応中の段階なのだろうと感じる。たとえば、アリゾナの試合では、極度の乾燥との戦いだ。3月16日(現地時間)に2回途中でKOされたコロラド・ロッキーズ戦との試合もテレビ観戦したが、明らかにスライダーが抜けて制球できず、まったく指にかかっていなかった。

 昔、ヤクルトがアリゾナのユマでキャンプをしていた頃、私もバッティングピッチャーをやったことがあるが、あまりに乾くのでビショビショに濡れたタオルをボールの入ったカゴのすぐそばに置き、1球投げては指を湿らせていたことを覚えている。それでもすぐにタオルは乾いてしまうので、また濡らしての繰り返し。日本人の感覚からしたら、そんなところで精緻な制球をしろというのは無理な話だ。

 逆に言えば、いま制球を乱しているのはアリゾナだからであって、場所が変われば問題ないと思っている。徐々にメジャー特有の硬いマウンドにも慣れ、下半身の使い方ができてくれば、投手としての大谷は十分にメジャーでもやっていけると思っている。

 問題はバッティングだ。

 私がなぜ「打者としては難しいのでは......」と思っていたかというと、一番の理由はメジャーの内角攻めである。日本では大谷に対して"球界の宝"という雰囲気があり、正直、際どい内角攻めはほとんどなかった。しかし、メジャーは容赦ない。

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