投球フォームは瓜ふたつ?稀代の名投手と田中将大の共通点 (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by Getty Images

 そして共通点として特に着目しているのが、ふたりの歩んできた背景です。メッツは1962年のエクスパンション(球団拡張)で誕生したものの、球団創設1年目は40勝120敗という記録的な負け数を残し、お荷物球団と呼ばれていました。それが、創設から8年目の1969年にシーバーの活躍で世界一に輝いたのです。特に劣勢と言われたワールドシリーズで、ア・リーグの強豪ボルチモア・オリオールズを4勝1敗で下したことによって、「ミラクル・メッツ」として後世に語り継がれるようになりました。

 この歴史的な快挙は、まさに昨年の楽天に似ていないでしょうか。田中投手の大活躍によって勢いに乗った楽天は、球団創設9年目にして初の日本一に輝いたのです。楽天の初代GMで、現在は球団アドバイザーを務めるマーティ・キーナートは、この快挙を「日本版ミラクル・メッツだ」と評しました。1969年にメッツが世界一になったとき、シーバーはリーグ最多の25勝(7敗)をマーク。対する昨年の田中投手は、ご存知のように24勝無敗です。ともにエースの驚異的な活躍がなければ、メッツも楽天も頂点を掴めなかったことでしょう。

 このように田中投手をいろんな角度から見てみると、いずれもシーバーを彷彿とさせます。ちなみにシーバーと彼の奥さんはメジャー屈指の「おしどり夫婦」として有名で、奥さんのナンシーはとてもチャーミングな女性です。非常に活発かつ社交的な方で、シーバーの登板する試合には必ず球場に顔を出していました。そんな奥さんの雰囲気も、田中投手の妻・まい夫人と似ているように感じます。

 ニューヨークという土地において、シーバーの存在は特別です。ヤンキースの専属解説者のひとりで、元サイ・ヤング賞投手のデービッド・コーン(1987年~1992年・2003年にメッツ、1995年~2000年にヤンキースに在籍)は、「タナカはシーバーの雰囲気にとても似ている」と語っていました。たしかに、ふたりの体型も似ています。シーバーの全盛期は185センチ・88キロ、対する田中は188センチ・92キロです。田中将大投手は、「現代のトム・シーバー」と言っても過言ではないと思います。

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