田中将大は同じ道を辿れるか?偉大なる即戦力ルーキーの系譜
公式戦デビューから2試合続けて7回3失点と、立派に先発投手の責任を果たしている田中将大投手。特に、4月4日のデビュー戦は見事でした。トロント・ブルージェイズ戦で圧巻だったのは、8個の奪三振に対し、フォアボールがゼロだった点でしょう。デビュー戦で「8奪三振以上・無四球」を記録したのは、2000年以降だと、2008年のジョニー・クエト(シンシナティ・レッズ)、2010年のスティーブン・ストラスバーグ(ワシントン・ナショナルズ)に続いて3人目。ヤンキースの投手では、1965年のリッチ・ベック以来、49年ぶりの快挙です。今後も、田中投手はメジャー1年目でさまざまな記録に迫ることでしょう。
ヤンキースの一員としてワールドシリーズ制覇を目指す田中将大 ただ、個人記録も楽しみのひとつですが、田中投手がメジャー1年目で目指しているのは、「ワールドシリーズで勝つこと」だと入団会見でも語っています。ヤンキースも1年目から即戦力として活躍してもらうために、7年総額1億5500万ドル(約161億円)という巨額マネーを投じました。常勝を義務づけられた名門ヤンキースにとって、田中投手は1年目ながら戦力にならなくてはいけないピッチャーなのです。
海を渡ってアメリカにやってくる外国人選手を戦力にする方法は、大まかに分けてふたつあります。ひとつは、10代の若い選手を獲得して、マイナーでじっくりと育ててメジャーに昇格させる方法です。ドミニカやベネズエラ、プエルトリコなどの選手は、そのような流れでチームの戦力となっていきます。
そしてもうひとつは、すでに自国内で実績を残している選手を獲得する方法です。キューバから亡命したナショナルチームの選手や、日本や韓国で活躍したトップ選手がその対象となります。チームが一刻も早く世界一を目指しているのなら、後者のような即戦力となる一流選手を獲る手段が有効です。まさしく田中投手は、ヤンキースが世界一を奪還するために迎えられた「ラストピース」と言えるでしょう。そこで今回は、ルーキーで世界一に貢献したピッチャーに焦点を当てたいと思います。
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著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)