優勝のキーマン。青木宣親が新天地で求められる2つの役割 (2ページ目)
日本ではなじみが薄いかもしれないが、3番からホスマー(一塁)、バトラー(DH)、ゴードン(左翼)、ペレス(捕手)、ムスタカス(三塁)と並ぶ打順は、若さゆえに三振も多いが、なかなか手強い重量打線だ。1番青木、2番インファンテ(二塁)が出塁すれば、誰かが走者を還してくれる。対戦相手にしてみれば、気の抜けない打線となるだろう。
さて、新チームに加入した青木は「優勝できるチャンスのあるチームでプレイできることは嬉しいこと」と、その喜びを表現している。キャンプインしたその日、ミーティング中に首脳陣だけではなく、選手からも「優勝」の言葉が飛び出したという。野球はやはり勝敗がすべて。どんな過程をたどっても、シーズン最後に勝ち残ったチームだけが"ワールドシリーズ覇者"の称号を手に入れられる。昨季10年ぶりの勝ち越しを果たしたことで、世界一は夢ではなく、手の届く範囲にあることを選手たちが肌で感じているのだろう。
青木は今年でメジャー3年目だが、プロ野球選手としては11年目のベテラン選手。若手の多いロイヤルズ野手陣の中では、インファンテに次ぐ年長者だ。首脳陣から「若手が多いから引っ張っていってほしい。いろいろ教えてやってほしい」と要請を受け、主砲のバトラーからも「リーダーのひとりとしてやってもらいたい」と声を掛けられた。
青木自身も「若い選手がいる分、僕みたいなベテランは、ブルワーズにいた時よりもやらなきゃいけないことが変わっている気がする」と、リーダーのひとりとしてチームに貢献するつもりだ。
リーダーのあり方はさまざまだ。声を出して盛り立てるタイプもいれば、プレイで結果を残して背中で引っ張るタイプもいる。青木の場合は後者だろう。ロイヤルズのヨスト監督は「アオキの打撃練習を見るだけで、若手には十分勉強になるはずだ」と言う。
「同じスイングを繰り返せる能力の高さは抜群だ。彼の打撃練習には感心するよ。毎回バットが同じ軌道を通るんだから。外角球は逆らわずに左翼へ力強い打球を飛ばす。内角球なら右翼線にしっかり引っ張る。彼ほど安定した打撃メカニックを持っていれば、安定した成績が残せるのは当然だ」
2012年春、自らの実力を証明し、開幕ロースターに名を連ねるために奮闘していた男は、ムラの少ない安定したパフォーマンスと野球に打ち込む熱心さを買われ、わずか2年で若手の手本と呼ばれる存在となった。慣れ親しんだ濃紺のユニフォームから、鮮やかなロイヤルブルーに色を変えた今季は、これまで以上の決意の強さが感じられる。
「僕がトレードでここへ来たことは意味があると思うから、しっかりチームのために貢献したいと思います」
今年のロイヤルズは、なんだか面白くなりそうな予感がする。
2 / 2