2014.03.09

メディアのいないところで、イチローは田中将大の一番近くにいる

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by AFLO

 キャンプ地のクラブハウス、田中将大に割り当てられたロッカーは、昨年までヤンキースの守護神として君臨していたマリアーノ・リベラが使っていた場所だった。ヤンキースでは、ヤンキースタジアムでもキャンプ地でも部屋の角のロッカーはチームの主力に与えられる。田中は入って左側の列、一番奥の角に座っている。そして、反対右側の列、入り口のすぐ近くにイチローのロッカーがある。

2009年の第2回WBCでチームメイトだった田中将大(左)とイチロー

 日本のプロ野球とは違い、メジャーリーグのクラブハウスはある決まった時間にメディアに開放される。今年はイチロー、田中、黒田博樹だけでなく、招待選手の建山義紀、そして特別インストラクターとして2009年まで所属していた松井秀喜がヤンキースのキャンプに参加。松井はコーチ用の部屋を使っていたとはいえ、多くの日本の報道陣がひとつの部屋に集まっていた。

 それだけに報道陣が取り囲むクラブハウス内で日本人選手同士が会話をする光景はあまり見られない。会話をすれば報道陣が群がり、その内容を聞かれることは避けられないからだろう。必要があれば、メディアへの開放時間が終わってから話せばいい。したがって、広いクラブハウスで対角線上にいるイチローと田中が交わる姿は見られなかった。

 公の場でふたりのシルエットが重なったのは、ポジションプレイヤー(野手)のキャンプがスタートしてから3日目の2月22日(現地時間)の朝だった。練習前に全選手が球団オフィシャルの個人撮影を行なった時である。グラウンドにいくつものブースがセッティングされ、順番に選手がそこに入り、カメラマンの要望に応えてポーズをとっていく。あるブースではバットやグラブを持ったポーズ。また、あるブースではシーズン中に大型ビジョンに流れる映像用にコメントを求めている。

 田中はイチローよりも約30分も早くスタートしたが、注目のルーキーとあって撮影時間は長くなっていた。後ろの選手たちが少しずつ、つかえてきていた。田中の顔に他の選手に迷惑をかけたくないという焦りが出てきた。その時だった。イチローが田中に近づいていった。

「おっ、まさお。元気か? それより(撮影のペースが)遅いよ」

 田中の顔がパッと笑顔に変わった。田中の撮影を遠巻きにみているイチロー。時には茶化しながら、談笑もしながら、撮影は進んでいった。2009年の第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でチームメイトだったふたり。田中は「『まさひろ』というよりは、『まさお』という感じじゃないか」と先輩たちからいじられ、ニックネーム化されていた。