渡辺俊介、メジャー挑戦中。変則型ピッチャーは成功できる? (3ページ目)
現役では、昨年ナ・リーグ最多の78試合に登板したブラッド・ジーグラー(ダイヤモンドバックス)や、2010年のテキサス・レンジャーズ時代に中継ぎとして球団初のリーグ優勝に貢献したダレン・オデイ(ボルチモア・オリオールズ)などがいます。このようにアンダースロー投手の多くは、ほとんどがリリーフです。僕の記憶で覚えている最後の先発アンダースロー投手は、1980年代にニューヨーク・メッツで活躍したテリー・リーチ(1981年~1993年)ではないでしょうか。1987年に44試合に登板し、そのうち12試合に先発して11勝1敗という記録を残しています。
古くからメジャーリーグの先発は本格派投手が多くを占め、サイドスローやアンダースローはリリーフとして起用されてきました。なぜならば、本格派に比べてあまり球威がなく、同じバッターと何度も対戦すると、相手が投球に慣れてくると言われているからです。しかし逆の視点で見れば、ワンポイントでの起用こそ、変則投手の良さが最大限に引き出されるということです。
近年のメジャーは、球団数の増加、分業制の確立、そして多彩なタイプを求める傾向から、変則型のピッチャーの需要が増加しています。また、オーバースローから変則スタイルに転向するピッチャーも増えてきました。よって、渡辺投手のようなタイプは今後、重宝されるのではないでしょうか。渡辺投手とマイナー契約を結んだレッドソックスは、昨年、ワールドシリーズを制覇するなど、戦力的に申し分ないように思われています。クローザーに上原浩治投手、そして中継ぎに田澤純一投手ら、素晴らしいリリーフ陣を擁していると言えるでしょう。ただ、強いて弱点を挙げるならば、右バッターを抑えることのできるタイプの投手が足りません。田澤投手を登板させる前の6~7回あたりでランナーを抱えたとき、ピンポイントの起用で右バッターを内野ゴロに仕留め、ダブルプレイの取れる投手が欲しいのです。
レッドソックスは昨年12月、ミルウォーキー・ブルワーズからトレードでバーク・ベイデンホップという右のリリーフ投手を獲得しました。ベイデンホップは昨年、右バッターに対して被打率.229という好成績を残すなど、得意のシンカーで内野ゴロを打たせる典型的なグラウンドボールピッチャーです。まさにレッドソックスが求めるタイプですが、今シーズン、ベイデンホップが期待外れだった場合に備えて、渡辺投手とマイナー契約を結んだのだと思います。
渡辺投手がオープン戦で右バッターを難なく打ち取り、結果を残していけば、ピンポイントのリリーフとしてメジャーデビューできる可能性は十分にあります。日本屈指のアンダースロー投手がメジャーの舞台に立てるのか、今後の活躍に期待したいです。
著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)
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