9月に大逆転の予感。ワイルドカード争いは、このチームに要注意
いよいよメジャーリーグも9月に突入し、地区優勝争いの行方が少しずつ見えてきました。また、同時に注目したいのは、プレイオフ進出を賭けたワイルドカード争いでしょう。1995年にワイルドカードが導入されたことによって、レギュラーシーズン終盤になっても集中力を切らすチームは少なくなり、さらに争いが激化しました。そこで今回は、熾烈なワイルドカード争いにスポットを当てたいと思います。
シーズン後半になって調子を上げてきたヤンキース。今年もプレイオフ進出なるか まず、近年のメジャーリーグの傾向を見てみると、8月末の段階で地区首位のチームがそのまま地区優勝するケースは減ってきております。8月31日終了時点で両リーグ計6地区の首位だったチームがすべて優勝したのは、2002年が最後なんです。ワイルドカード導入1年目から見てみると、1995年から2002年までの8年間で、8月末時点の首位チームが地区優勝したのは、合計述べ48チームのうち42チーム(勝率.875)。一方、2003年から2012年までの10年間を見れば、合計述べ60チーム中、優勝したのは43チーム(勝率.716)です。勝率からも分かるとおり、近年は9月以降の逆転劇が目立つようになってきたと思います。
レギュラーシーズン終盤での逆転劇で、近年、最もインパクトを残したのは2011年でしょう。ア・リーグのタンパベイ・レイズが、9月に入って思わぬ快進撃を見せてくれたのです。8月31日時点でのレイズは、ワイルドカード争いで首位のニューヨーク・ヤンキースと7.5ゲーム差。さらに9月初旬も負けが先行し、最大9ゲーム差まで広がっていました。しかし、そこからレイズは脅威の連勝街道を突き進み、なんとレギュラーシーズン最終日に劇的なサヨナラ勝利を決め、見事プレイオフ進出を果たしたのです。
そしてナ・リーグでも、レイズと同じような逆転劇が見られました。その主役となったチームは、中地区のセントルイス・カージナルスです。8月末時点のカージナルスは、ワイルドカード争いで首位のアトランタ・ブレーブスに8.5ゲーム差をつけられていました。しかしその後、脅威の追い上げを見せてワイルドカードを勝ち取り、その勢いはプレイオフに入っても衰えませんでした。並み居る強豪を次々と撃破し、ついにワールドシリーズまで到達。そして最終的にテキサス・レンジャーズを4勝3敗で打ち破り、見事、通算11度目のワールドチャンピオンに輝いたのです。
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著者プロフィール
福島良一 (ふくしま・よしかず)
1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima)