2013.09.03

日米に見る投手育成法の違い。「投げ込み」は必要か?

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 ニューヨーク・メッツの右腕、マット・ハービー(24歳)が右ヒジの靭帯を部分断裂していることがわかり、故障者リストに入った。本人は「トミー・ジョン手術を避けるためなら何でもする」と、手術回避への強い思いを口にしており、今後は右ヒジの様子を見て、第2、第3の治療法も視野に入れながら判断するという。だが、メッツのサンディー・アルダーソンGMはトミー・ジョン手術を受ける可能性を示唆した。

右ヒジ靭帯の部分断裂が発覚し、今季絶望となったマット・ハービー

 ハービーといえば、今年のオールスターでナショナル・リーグの先発を務めた投手であり、ここまで9勝5敗、防御率2.27と、低迷するメッツにあって唯一の希望の星だった。もちろん、メッツも2010年のドラフトで1巡目(全体7位)の指名で獲得した超有望株を壊してはならないと、2年間マイナーで投球制限を設けながら少しずつ投球回数を増やすなど、大事に育ててきた。

 だが、ハービーのヒジは壊れた。投手の宿命なのか。原因は何だったのか。米メディアは「メッツの育成方法に間違いはなかった」との論調を展開したが、果たしてそうなのだろうか。

 ハービーの故障で思い出されるのが、2010年にトミー・ジョン手術を行なったスティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)だ。21歳(当時)にして彗星のごとくデビューしたストラスバーグは、100マイル(約160キロ)の直球を軸に三振の山を築いていった。だが、デビューしてからわずか12戦目、68イニングを投げたところで彼のヒジは悲鳴を上げた。

 この時、ナショナルズは育成方法について問われた。2009年のドラフト指名(全体1位)からメジャーデビューするまで、ストラスバーグがマイナーで投げた試合はわずか17試合。イニングにして75回2/3だった。こうした経緯もあって、ナショナルズはメディアから叩かれることとなった。

 では、ハービーはどうか。ストラスバーグの事例もあって、メッツは慎重に慎重を期してきた。2年間マイナーで過ごしたハービーは、46試合に登板し、245回2/3を投げ、肩、ヒジの強化を計ってきた。米メディアが「育成方法に間違いはなかった」としたのも、こうした背景があったからだ。