ヤンキースは「ピンストライプの誇り」を取り戻せるか?

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 ピンストライプのプライドという言葉がある。ヤンキースに在籍した選手ならば、誰でも口にする言葉だ。

「試合のあらゆる状況下、選手はすべきことをしっかりとする」

現地時間8月28日のブルージェイズ戦に登板した黒田博樹だったが、5回7失点で10敗目を喫した。写真左は26日の試合から復帰したジーター現地時間8月28日のブルージェイズ戦に登板した黒田博樹だったが、5回7失点で10敗目を喫した。写真左は26日の試合から復帰したジーター

 このわかりやすい例が、進塁打であり、犠打や犠牲フライなどだ。無死二塁ならば確実に右方向へ打球を打ち、走者を進める。そして犠打も確実に決める。プロダクティブ・アウト(生産的なアウト)とも表現され、最低限の仕事を確実に行なうことを意味する。

 野球選手ならば、この最低限の仕事は誰でも意識することだが、相手もそれをさせまいと必死に攻めてくる。しかし、ヤンキースの選手は伝統的に任務遂行力が高かった。それが彼らの野球を支えるものであり、自分たちの誇れるものとして胸を張ってきた。

 だが、現在のヤンキースナインにこの"プライド"を口にすることは許されないだろう。なぜなら、最低限の仕事ができていない選手が多すぎるからだ。進塁打を打てずにポップフライを打ち上げ、バントのサインが出ても決めることができない。また、首脳陣の采配もしかるべきで、首を捻る場面が非常に多い。

 例えば、7月30日のドジャース戦。2-2で迎えた9回二死二塁。ライトを守るイチローは当然のように思い切った前進守備をとる。だが、センターのガードナー、レフトのソリアーノは定位置のまま。2選手の判断も信じられないが、ベンチは何の指示も出さない。挙げ句、打者エリスの打球はセンター前に落ちる安打でサヨナラ負けを喫した。

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