2013.08.25

324日ぶりのメジャーマウンド。
松坂大輔が直面した「4マイルの溝」

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 324日ぶりのメジャーのマウンド。あの人懐っこい笑顔の松坂大輔が、戦いの場に戻ってきたことが何より嬉しかった。背番号は16。メッツの歴史でいえば、奪三振マシンのドワイト・グッデン、1988年に20勝を挙げたデービッド・コーン、そして日本人メジャーリーガーの先駆者・野茂英雄がつけていた背番号だ。松坂がこだわる『18番』は3塁ベースコーチのティム・タフルがつけているため譲渡はされなかったが、メッツがメジャー通算50勝の松坂に対し、敬意と期待を込めて『16番』を贈ったことは十分に伝わった。

324日ぶりのメジャーマウンドとなった松坂大輔は試合後、「予想以上に緊張してしまった」と語った

 現地時間8月23日のタイガース戦。結果は5回、86球、6安打、2本塁打、1四球、4三振、5失点。19日の3Aの最終登板から中3日での登板であり、その相手が現在メジャー最強を誇るタイガースであったことを考えれば、評価は先送りしてもいいだろう。伝え聞くところによると、メッツはシーズン最後までローテーション投手として起用する考えだと言う。だが、この登板で"松坂大輔の現状"がはっきりと見えた。

 いまさら、スカウティング・レポートなるものを詳細に紹介するまでもないと思うが、各打者には相手先発投手の球種、球速などが書かれたデータが試合前に配られる。そこで打者にとって重要になってくるのが、各球種の平均球速なのである。

 報道陣はとかく最速という形で投手を表現することが多い。だが、対峙する打者にとって、最速のデータは重要でないという。平均球速はどのくらいなのか。打者はその数字を頭に入れ、他の球種と合わせて対応を計る。この話は、ヤンキースのイチローから聞いたことがあるし、松井秀喜からも同様のことを聞いた。

 こうした観点で今回の松坂の投球を見てみると、現状が浮かび上がってくる。

『4マイルの溝』