トレード期限終了。補強に成功したチーム、失敗したチームとは?

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 7月31日にトレード期限が終了し、ア・リーグ、ナ・リーグともに今年も多くの選手がチームを移籍しました。まずは本題に入る前に、この時期のトレードの重要性について説明したいと思います。1999年以降の14年間を振り返ると、実は7月にトレードを行なったチームが必ずワールドチャンピオンになっています。その事実からも分かるように、7月のトレードが「世界一へのカギ」を握っているのは間違いありません。昨年は7月31日に10件のトレードがあり、合計28名の選手が動きました。今年は例年ほどではなく、最終日は3件のみ。活発な年というわけではありませんでした。しかし、その中でも成功したチームと、失敗したと思われるチームがありましたので、今回は各チームのトレード模様について紹介したいと思います。

レッドソックスのユニフォームを脱ぎ、タイガースの一員となったイグレシアスレッドソックスのユニフォームを脱ぎ、タイガースの一員となったイグレシアス 今回のトレード期間を振り返って最も成功したと言えるのは、ボストン・レッドソックス(ア・リーグ東地区1位)と、デトロイト・タイガース(同中地区1位)ではないでしょうか。まずレッドソックスは、7月13日にシカゴ・ホワイトソックス(同中地区5位)からマット・ソーントン(50試合・0勝4敗・防御率3.47)という左の中継ぎ投手を獲得。さらに7月30日、同じくホワイトソックスからエース格のジェイク・ピービー(9勝4敗・防御率4.14)も獲得しました。しかも、他球団から交換要員として狙われていたチームのトッププロスペクト(チーム1の有望株)であるイグザンダー・ボガーツという遊撃手を放出することなく、今回のトレードを成功させたのです。将来のスター候補との呼び声高いボガーツは、今年3月に行なわれたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)にオランダ代表として出場した20歳の選手。彼の流出を防いだのは、非常に大きいと思います。

 エースのジョン・レスターをはじめ、ライアン・デンプスター、そしてジョン・ラッキーと、エースとして実績のある一流投手がずらりと揃っているレッドソックス。この先発陣に、かつてサンディエゴ・パドレスでエースを務め、2007年にサイ・ヤング賞を受賞したピービーが加わることになりました。レッドソックスは6年ぶりの世界一に向けて、一番重要な補強ができたと思います。また、メジャーを代表する中継ぎと言われているソーントンの加入も、リリーフ陣の負担を軽くするでしょう。右の上原浩治投手と田澤純一投手に加えて、左のソーントンが貴重な戦力になること間違いなし。非常にバランス良い補強だと思います。

 一方のタイガースは、7月31日、ヒューストン・アストロズ(ア・リーグ西地区5位)で今季19セーブを挙げているクローザーのホセ・べラス(45試合・0勝4敗19セーブ・防御率2.72)という右投手を獲得しました。現在、タイガースの抑えには安定感抜群のホワキン・ベノワがいますので、ベラスは彼につなぐ役割となるでしょう。昨年はリーグ優勝したものの、世界一を逃した大きな要因となったのが、リリーフ陣でした。一番大事な場面で、当時のクローザーのホセ・バルベルデ(現タイガースのマイナー)が打たれるという大誤算。「昨年の二の舞を演じない」という意気込みが伝わってくるトレードです。

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