トレード期限終了。補強に成功したチーム、失敗したチームとは? (3ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
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 しかしレンジャーズは、右の強打者をこのトレード期限までに補強できませんでした。ダルビッシュ投手の勝ち星が伸び悩んだのも、得点力の低下が理由のひとつです。レンジャーズにはネルソン・クルーズという右の強打者がいるものの、タイガースのペラルタと同様、薬物規定違反で50試合の出場停止処分を科されたため、彼の穴埋めが必要でした。このトレード失敗が、今度どのように影響していくのか気になります。

 あと、トレード期間をうまく生かしきれなかったのは、ニューヨーク・ヤンキース(ア・リーグ東地区4位)と、ピッツバーグ・パイレーツ(ナ・リーグ中地区1位)だと思います。ヤンキースは7月26日、カブスからアルフォンソ・ソリアーノ(打率.253・18本塁打・55打点)を獲得しました。1971年以来もっとも長い期間(26試合)、右バッターからのホームランが出ていなかったヤンキースにとって、10年ぶりに帰ってきた右の大砲の存在は大きいでしょう。

 しかし、それよりも大事だったのは、三塁手の穴を埋めることでした。アレックス・ロドリゲスが薬物規定違反により211試合の出場停止処分を科されたので、戦力としては期待できません。また、今オフにA・ロッドの代役として獲得したケビン・ユーキリスも故障続きです。メジャー30球団の三塁手の成績を比べてみると、ヤンキースの成績は30位。トレード期限ぎりぎりまでフィラデルフィア・フィリーズ(ナ・リーグ東地区3位)に所属するマイケル・ヤングの獲得を狙っていましたが、残念ながら間に合いませんでした。

 また、現在メジャー最高勝率(.600)を誇るパイレーツも、打線の強化を図りたかったのですが、トレードで強打者を獲得できませんでした。さらに、躍進の原動力となったクローザーのジェイソン・グリーリが故障者リスト入りしたので、ブルペンの補強も必須でした。しかしパイレーツは何も動けず、トレードを生かしきれなかった印象です。

 このように成功したチーム、そして失敗したと思われるチームが、残りのレギュラーシーズンでどんな戦いを見せるのか。プレイオフまで残り2ヵ月、今回取り上げたチームに注目してください。

※数字は8月4日現在

プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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